特許行政年次報告書2017年版にみる、中小企業と地域の知的財産への取り組み
● 「特許行政年次報告書2017年版」を公表
前回は、上記報告書の第四次産業革命対応について採り上げましたが、
今回は、中小企業と地域に関する取り組みについて目を向けたいと思います。
2017/6/29に特許庁は、「特許行政年次報告書2017年版」を公表
http://www.meti.go.jp/press/2017/06/20170629001/20170629001.html
まず、日本の中小企業数は、およそ 381 万社と全企業数の 99.7%以上を占めていますが、件数に占める中小企業の割合は 15%にすぎなません。
それに対して、2016 年の内国人出願における中小企業の出願人数
比率は、61.6%(前年 60.0%)となっています。
ここで、出願人とは、個人、法人双方を含むので、上記の数字は、
中小企業1社当たりの出願件数は、大手企業の約1/4であることを
示しています。
なお、中小企業数に対する特許出願中小企業数の割合は、2016 年
で全国平均 0.3%、一位の東京でも約0.8%であり、特許出願を経験
している中小企業の割合は大変低いものとなっています。
また、地域別の特性を見ると、全国平均を上回る都道府県は、東京、
神奈川、福井、愛知、滋賀、京都、大阪となっており、そのうち、
東京、京都、大阪においては、毎年増加傾向にあるとしています。
商品・サービスの名称やロゴなどが関連する商標については、
内国人出願における中小企業の出願件数比率は、59.2%(前年 54.5
%)で中小企業の件数比率は伸びています。また、2016 年の内国人
出願における中小企業の出願人数比率は、64.5%(前年 64.6%)で
前年とほぼ同様であることから、中小企業1社当たりの商標の出願件
数は、特許と比較すると大手企業との差は小さく、かつ昨年よりも
増加していることがうかがえます。
また、商標については、中小企業数に対する商標登録出願企業数の
割合は、2016 年で全国平均 0.71%で、特許よりは高いものの、
やはりごく少数であること、また、大都市に集中していることが
挙げられています。
これは、商標で自社の商品やサービスであることを示す必要性を
感じる企業(エンドユーザー向けの商品を扱っている企業)が多い
のか、商標を出願できるだけの企業体力のある中小企業は大都市圏
に集中しているのか、いずれかではないかと思います。
上記のような状況のもとで、2016年月に閣議決定された「日本
再興戦略 2016」では、「中小企業の知財戦略の強化」を図ることと
されました。これらを受けて、2016 年 9 月の産業構造審議会第9回
知的財産分科会の議論により、「地域知財活性化行動計画」が策定
されています。
中小企業と地域の取組
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2017/honpen/0103.pdf
この計画の中で、、
(i)着実な地域・中小企業支援の実施、
(ii)地域・中小企業の支援体制の構築、
(iii)成果目標(KPI)の設定と PDCA サイクルの確立
という、3 つの基本方針のもと、
イメージマッチングなどの技術を活用した、特許や技術関連の情報
提供の仕組みの改良、特許戦略ポータルサイトなど知財の活用方法
に関する情報提供、的財産を活用した融資の促進などの活動状況を報告しています。
特許庁の、中小企業、地域等への支援
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2017/honpen/0206.pdf
● 政策情報から、今後のトレンドを考える
上記のような外部状況および行政の取り組みに関する情報は、
特に外部状況については、鵜呑みにせず、出来るだけ自分でも複数の
情報源から裏付けを取っていく必要がありますが、
把握すべき情報の全体感を掴み、政策の影響が大きい分野での今後の
トレンドを考えるうえでは、把握しておくことは有効だと思います。
特に「知財ビジネス評価書作成支援」や「特許情報の活用支援」は、
知的資産経営の点からも、自社で使えるものかどうかを判断し、
使えると思えば素早く対応することが競争力強化に有効かと考える次第です。