AI・IoTによる農作物の種子の多様性維持への期待と地元企業のビジネスチャンスの見つけ方

【今日のポイント】

種子法の廃止を受けて、自治体レベルで種子の品種の多様性確保や各地固有の農産物の維持を図る動きが進められています。

ここに、ICTやAI・IoTを適用して生産性向上を図ることは既に始まっていますが、さらに地域全体を活性化するエコシステムの構築に繋げる動きも今後加速されるのではないか、そこに地元中小企業のビジネスチャンスも見つけられるものと考える次第です。

● 農作物の種子条例 地域で多様性を守る意味

2019/2/3 信濃毎日新聞[信毎web] に表記の記事が掲載されていました。

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

『 県が種子条例(主要農作物等種子条例)の骨子案を発表した。コメ、麦、大豆、ソバについて、これまでと同じように、県が地域に合った品種の選定や種子の生産に取り組むと定めている。

 各地に残る伝統野菜を守る動きを支援することも盛った。

 条例制定に乗り出した背景には、国が昨年春、民間企業の参入を促すためとして、種子法(主要農作物種子法)を廃止したことがある。都道府県に種子の生産を義務付けていた法律で、食糧の安定供給の基盤になってきた。

 条例は、公的な種子供給システムの重要性は失われていないというメッセージでもある。種子法にはなかった基本理念も新設し、「欠くことのできない重要なもの」と強調している。

 条例制定を機会に、種子の保全と開発、生産の持つ意味を県民レベルで改めて考え直したい。

 それは信州の農業と県民の食生活を守ることにつながる。

(中略)

<持続可能な農業へ>

 昨年の種子法廃止は、消費者や農家の間に不安を広げた。

 目立ったのは、バイオテクノロジーを駆使してビジネスを展開する外資系企業によって種子の独占が進む懸念である。

 特定の農薬に耐性のある作物を遺伝子組み換え技術を使って開発し、農薬とセットで種子を供給する。農家は毎年、同じ種子を購入せざるを得なくなる。既に海外でみられる現象だ。

 医薬、農薬、化学肥料などを複合的に手掛ける多国籍企業は、巨大化している。多額の研究費を投じることができる。種子の開発は今後も加速するとみられる。

 公的な品種が定着したコメなどへの本格的な進出は考えにくいとの見方もある。それでも、杞憂(きゆう)と片付けることはできない。

 日本は1993年、生物多様性条約を批准した。2013年には食料・農業植物遺伝資源条約に入った。大規模化や作物の単一化で失われていく多様性に目を向け、持続可能な農業を目指す動きは世界の潮流の一つになっている。日本も、そのなかにいる。』

国が2018年春に、民間企業の参入を促すためとして、種子法(主要農作物種子法)を廃止した長野県が、種子条例の骨子案を発表したもので、

そこには、コメ、麦、大豆、ソバについて、これまでと同じように、県が地域に合った品種の選定や種子の生産に取り組むと定め、かつ 各地に残る伝統野菜を守る動きを支援することも盛り込んでいるとのことです。

種子法の廃止で、バイオテクノロジーを活用した外資系企業による種子の独占が進むことへの懸念と、特定の品種に偏らない、遺伝資源の多様性の維持の両面から、自治体レベルで、種子の生産と地元の農産物品種の保護を進める動きが始まっていることが窺われます。

● 効率的な多品種少量生産へ

「豊岡でのトヨタ式「カイゼン」による農業の生産性向上 にみる知恵の流れとフィードバックの重要性」
でもお伝えしたように、製造業が先行している生産性向上の仕組みや知見の他業界への適用は、この品種の多様性確保にも適用出来るものと思います。

以前から、製造業では各分野で少品種大量生産から多品種少量生産へと進んできていますが、この様な形での多様性と生産性向上との両立が農業にも求められていると感じます。

そして、少量生産における生産性向上は、上記の外資攻勢への対応策の1つとしても重要なものとなります。

種苗事業にICTなどの技術を適用することは、富士通が2012年からクラウドによるプラットフォームを提供するなど既に始まっていますが、今後、AI・IoTなどの農業利用はさらに進んでいくことは間違いところかと思います。

富士通の磐田スマートアグリカルチャー事業

● スマートアグリから地域創生などのエコシステム構築へ

上記の富士通の記事でも触れられていますが、

「TrexEdgeが目指すスマートビレッジに見る地方創生における仕事と生活の不可分性の視点」

「オプティムの農林水産・流通加工・食品産業向けAI・IoT・Robotプラットフォームにみるトレーサビリティ市場の広がり」
などでもご紹介したとおり、単にICTやAI・IoTを生産性向上に振り向けるだけでなく、医療、食品、飲食業など他の業界との連携にも活用して、バリューチェーンの改革やエコシステムの構築を進める取り組みが始まっています。

少子高齢化対応や国内農業の活性化によるセキュリティの確保などに向けて、地域全体をトータルに活性化する動きが今後も進むことが期待されます。

そして、そこに地元密着型の中小企業のビジネスチャンスも見つけられるものと考える次第です。

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