テレワーク関連の記事や調査からみた知的資産構築の課題とチャンス

テレワーク リモートワーク

【今日のポイント】

2022年も、新型コロナの流行は収まらず、今後もテレワークの継続やオンライン化の加速が予想されますが、

その対応について、知的資産経営の視点から検討してみると、また新たなリスクとチャンスが見つかるかと、お試しすることをお勧めする次第です。

【目次】
1.テレワークや業務のオンライン化に関するニュース記事
2.公的なデータや調査にみるテレワーク関連の動向
3.テレワーク、業務オンライ化の中での知的資産構築の課題とチャンス

 

1.テレワークや業務のオンライン化に関するニュース記事

新型コロナが加速した、在宅勤務を始めとするテレワーク・リモートワーク商談や契約、支払いから会計など商取引の全般に渡るオンライン化の流れは今後も続くことは既に多くのメディアで報じられているところですが、
その流れに自社の現在の持つリソース(経営資源)でどう対するのか、足りない部分はどうやって補っていくのかという課題を多くの企業が抱えるということもまた、今後も続いていくのではないかと思います。

本トピックスでは、テレワークやオンライン化について、知的資産(目に見え難い自社の強み)との関係ではどう対するのかという視点から見てみたいと思います。

まず、企業が感じている課題や対応に関するニュースをいくつか採り上げてみます。

● 「従業員エンゲージメント向上のための効果的なアクションプラン」に関する研究結果を公開

2021/12/22に株式会社リンクアンドモチベーションは、表記のプレスリリースで、同社の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所が行った調査結果を公表しました。

(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)

『結論
従業員エンゲージメント向上のためには、診断だけに留まらずアクションを持続することが重要である。

持続させるためには「行動に繋がる具体性があること(≒Specific)」「表現が短く端的で達成できる粒度であること(≒Achievable)」「期限やスケジュールが明確であること(≒Time-bound)」の3つの要素を満たすアクションプランを設定することが効果的である。』

明確なプランを改善しつつ継続する事が目的達成のために必要であり、継続できるように、課題をいわゆる「ちょいムズ(ちょっと難しいが達成可能)なレベル」まで、ブレークダウンし細かい目標に細分化してマイルストーンを設定することの重要性は、エンゲージメントマネジメントだけでなく、全ての事業改善に通じるものと思います。

また、そのような進め方自体を組織的に行える仕組みの構築は、知的資産経営の構造資産や人的資産の構築となるものと考える次第です。

 

● 「未来家賃削減」「RPA・AI・ロボット導入」による生産性向上の結果として2022年度より「給与No.1」の実現に向けた取り組みを始動!~国内外から優秀な人財が集う仕組みを構築~新卒給与をNo.1にする『710プログラム』も2023年度採用より開始~

2021/12/9にGMOインターネットグループは表記のプレスリリースを公表しました。

『事業の継続的な成長をベースとしながら、リモートワークの活用により人員増に応じた増床をせず、将来の家賃を抑制する「未来家賃削減」を実現し、「RPA・AI・ロボット導入」による『生産性向上』の結果として、各業界・地域における最高水準の給与(以下 「給与No.1」)を実現する取り組みを2022年度より始動いたします。』

⇒海外の在宅勤務者への手当に関する話題は、以下の1日5分ビジネス英語でも新型コロナ以前も含めて採り上げていましたが、人材育成や確保だけでなく、リモートワークの促進と生産性向上の両立を通じて、地域振興にも繋がる動きとして、要注目と感じます。

 

● 『ポルトガル、従業員向けの在宅勤務法を導入 Portugal introduces remote work law for employees』

2021/12/21の1日5分ビジネス英語の記事。

『従業員と雇用者の両方に役立つのは、在宅勤務への切り替えによって労働者が支払った費用を企業が負担しなければならないという規定である。
これには、電気やインターネットの請求書が含まれる場合があるが、水道料金は含まれない。
雇用主はこれらの費用を事業費として償却することができ、それによって雇用主にも救済が提供される。』

在宅勤務手当とそれを費用として雇用主も償却出来る制度ですが、それ以外にも、営業時間外への従業員への接触禁止など、ワーク・ライフ・バランスに配慮した規則のようです。

このようなプライベートの保護と今までの「飲みニケーション」のような、業務外も含めたコミュニケーション維持の両立は、今後のテレワークの課題となるものと考える次第です。

 

● 『在宅勤務者を歓迎し、お金も渡すバーモント州   Vermont to welcome remote workers, and pay them too!』

2018/06/07の1日5分ビジネス英語の記事。

『引越代とコンピューターやインターネット回線にかかった経費を支払うための10,000ドルは、2年間にわたって支払われる。
バーモント州は、この制度の最初の3年間で100人の州外労働者を呼び込むことを計画している。』

新型コロナより前の、2018年の米国バーモント州の施策ですが、現在ならワーケーションやステイケーションなどのカタチも含めて、検討・導入対象とする自治体も各国で広がるのではないかと思います。

 

また、前回もご紹介した、2021/12/13に株式会社PR TIMESが発表した、2021年の企業がプレスリリース時に選んだキーワードに関する以下の記事からも、企業が新型コロナ自身からDXのようなコロナがもたらした変化への対応の取り組みに、自社の公表したい内容を換えてつつある事、また対外的に公表できるレベルの取り組みが増えて来ていることが窺えます。

 

● 『22021年企業動向を23万件の企業発表から振り返る PR TIMESプレスリリースキーワードランキングを発表!
-「DX」が年間1位に。コロナ前との変化を19年~21年で比較。22年注目ワードも! –

 

2.公的なデータや調査にみるテレワーク関連の動向

以下では、政府などの公的な調査やデータから、テレワークやオンライン化関連の動きを見てみたいと思います。

● 『第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』
内閣府の調査。
2020年からの4回にわたる上記調査のサイトはこちら。
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html

2021年11月1日 第4回の調査結果はこちら。
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result4_covid.pdf

⇒テレワーク実施頻度の変化(就業者)で、出勤との併用も含めて何らかの形でテレワークを実施している就業者の割合は、
2019年の10.3%から2020年5月には27.7%2020年12月には21.5%2021年4~5月は30.8%2021年9~10月は32.3%と推移していますが、

テレワークの割合が50%を超えている層は、2020年5月(第1回の緊急事態宣言下)が最高(17.2%)で、202年12月に10.4%に減少した後、2021年4月以降に若干増えてはいますが、2021年9~10月でも12.5%で2020年5月の約7割に留まっています。

また、東京都(23区)は相対的な変化は全国と同様ですが、2020年5月には何らかの形でテレワークを利用している割合は48.4%、その後202年12月に落ち込んだ後、2021年9~10月は55.2%全国よりもかなり高く、特に50%以上テレワークを利用している層は、2021年9~10月には31.8%と全国の3倍近い水準となっています。

このことからも、テレワークの実施率は、大都市の方が高い傾向があることが窺えるかと思います(同調査では、地方圏での実施率の推移も掲載されていますが、全国よりも更に低く、2021年9~10月時点で何らかの形でテレワークを実施している企業は23.5%に留まっています)。

また、企業規模別では、規模(従業員数)の大きい企業ほど、テレワークの実施率が高いという傾向も出ています。

 

● 『令和2年度 テレワーク人口実態調査』
2021年3月19日国土交通省の調査(以下のその概要です)。
https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi03_hh_000072.html

『(1)制度等に基づく雇用型テレワーカー※1の割合(政府KPI※2)

雇用型就業者のうちテレワーク制度等に基づくテレワーカーの割合は、昨年度の9.8%から、19.7%と倍増。

※1:社内規定などでテレワーク等が規定されている、または会社や上司などからテレワーク等を認められている雇用型就業者のうち、テレワークを実施している人。

※2:「世界最先端IT宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)において、テレワークの普及に関するKPIのひとつとして、平成32(2020) 年には、テレワーク制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合を平成28年度比で倍増(7.7%→15.4%) させるとしている。

(2)緊急事態宣言(4~5月)前後のテレワークの実施状況

雇用型就業者のテレワーク実施率※は、緊急事態宣言中に大きく増加し全国で20.4%に達したが、解除後に減少し16%台となっている。
また、緊急事態宣言が発令された4~5月の実施率は、首都圏が31.4%と高い一方、地方都市圏では13.6%にとどまっている。

※:制度等に基づかない雇用型テレワーカーを含む。

(3)テレワークの開始時期・満足度・実施意向等

テレワークを開始した時期は、約6割の人が緊急事態宣言が発令された4月以降に開始したと回答。
また、約64%の人がテレワークに総合的に満足しており、今後も実施したい人は約82%であった。

(4)テレワークを実施していない理由

テレワークを実施していない理由 としては、「仕事内容がテレワークになじまない」が約62%と最も多く、「会社から認められていない」が約14%、「その他の理由」が約24%であった。

(5) 自宅でのテレワークの課題

テレワークの実施場所は、自宅が約90%と最も多かった。一方、テレワークを実施して悪かった点として、「勤務状況が厳しくなった(仕事に支障、勤務時間が長くなる等)」(約47%)に次いで、「仕事をする部屋等の環境が十分でなく不便だった」(約35%)との回答が多く、コワーキングスペース等の利用意向がある人は、テレワーク実施者のうちの約38%であった。』

⇒上記の内閣府の調査と実施率等については同様の傾向が出ていますが、テレワークの満足度は基本的に高く今後も実施を希望する割合は8割を超えています。
一方で、テレワークを実施していない理由では仕事の内容が最も高い割合を示していますが、逆にこの部分は、オンラインコミュニケーションの技術や、電子署名のような法制度の整備で超えられる部分ではないかと考える次第です。

調査結果(抜粋版)はこちら。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001391381.pdf

 

● 『情報通信白書令和3年版』
総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r03.html

テレワークについては、第1章『デジタル化の現状と課題』 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1100000.pdf で、

『働き方においてデジタルによる変化が定着するという回答は全体で11%であったが、「テレワーク及びワーケーション」では、利用している層は16.5%、利用していない層は8.8%であり、利用している層は、利用していない層よりもデジタル化が定着するという見方が強いということが特徴的である』

デジタル化に肯定的な評価を持っている層とテレワークの利用層とは相関があることが示されています。

第2章『コロナ禍で加速するデジタル化』 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n2100000.pdf では、

コロナ収束後も利用したいサービスとしては、ビジネス関連でもオンライン会議やオンラインによる手続きよりもテレワークは下位となっていますが、その背景にはオンラインの利便性とコミュニケーションなどの対面の利便性の良い所取りは中々困難という事情が窺えると思います。

 

●『「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査(2021年11月実施)」調査結果』

2021/12/22の東京商工会議所が運営に携わっている、 tosho-antennaに表記の記事が掲載されていました。

『東京23区内中小企業のテレワーク実施率は8.7ポイント減の31.2%。
緊急事態宣言の解除をきっかけにテレワークを廃止したという声も』
『◎テレワーク継続の目的は、「出勤人数を抑制(三密回避)」が58.7%と最多となったものの、前回調査と比べて、14.9ポイント減少し、「働き方改革の推進」「コスト削減のため」「人材の採用・確保のため」と答えた企業が増加。』

新型コロナ対応の理由では新型コロナ感染状況によって影響を受ける一方で、働き方改革などの経営改善へ目的が移行しつつある事が窺えるかと思います。

 

3.テレワーク、業務オンライ化の中での知的資産構築の課題とチャンス

以下の記事では、テレワークやオンライン化の推進やそこで生じる新たな課題への取り組みが進められていることが窺えます。

 

● ~5分で見える化 DX推進の第一歩!~ 中小企業の生産性向上を支援するIT戦略立案ツール「IT戦略ナビ」リニューアルのお知らせ

2021/12/22に独立行政法人中小企業基盤整備機構は表記のプレスリリースを公表しました。

『「IT 戦略ナビ」では、3STEP の項目選択で自社の課題を見える化した「IT 戦略マップ※」を作成し、
課題解決に役立つ IT ソリューションを簡単に確認することができます。

※IT 戦略マップとは、「どのように IT を活用したら、ビジネスが成功するか?」という“仮説ストーリー”を 1 枚の絵にまとめたものです。
〇IT 戦略ナビ URL https://it-map.smrj.go.jp/ 』

⇒この『仮説ストーリー』は、知的資産経営における「価値創造ストーリー」にも通じるものと感じましたが、
経営理念や方針、課題の設定や可視化からの戦略策定と言う戦略検討から策定というフローや手法自身の普及と言う点でも貢献する事に期待する次第です。

 

● 関電システムズ、年間約12,000枚の契約関連書類の押印と取引先の収入印紙が不要に
~「BtoBプラットフォーム 契約書」導入で取引先と双方で進む業務改革~

2021/12/9に株式会社インフォマートは表記のプレスリリースを公表しました。

『関電システムズは100社におよぶパートナー企業と共にシステムの開発や保守・運用を手掛けています。契約で発生する書類は年間約12,000枚。電子契約で非効率な作業をなくし、取引先と双方で進んだ業務改革について伺いました。』

費用削減や業務負荷低減などの生産性向上とともに、
契約情報を取引先などステークホルダーの属性把握とその推移などの可視化と事業課題の発見に利用する事は、IPランドスケープによる特許情報の活用にも通じる、新規活用方法と感じます。
その観点から、取引関連書類のデジタルデータの利活用への展開も要注目と考える次第です。

 

上記のような取り組みを、知的資産経営の視点から見てみると、以下のように、現在の傾向を整理できるかと思います。

・人的資産の確保と強化:採用、従業員間のコミュニケーション全般でオンラインの活用が必須となっていく
コミュニケーションの課題への対応として、雑談や、縦と横に加えて斜めのコミュニケーションの機会も重要となってくるかと思われます。

 

・構造資産の構築:オンライン化は業務フローの可視化のチャンスでもある

社内外のコミュニケーションも含んでやり取りされる情報・データをデジタル化して一元管理していくことで、社内外で必要な知見の共有や過去の知見の活用、業務管理における取りこぼしなどのリスクの低減が期待できます。

 

・関係資産の構築:SNSなどにより、社会全体(場合によっては国を超えて)に情報発信できる現在、自社のビジョン商品に込められた自社の社会課題への取り組みの志などを従来の取引先も含めて広く伝える事が可能となってきていますので、従来の商圏やユーザー層を超えて市場を広げる機会ともなるかと思います。

逆に、自社の現在の市場に、他業界からの参入も増える可能性という点では、従来事業にとってはリスクが高くなることも示しているものと考える次第です。

このように、知的資産経営の視点から見ても、現在の働き方の変化は、大きなリスクと機会の双方を提供していること、その対応は企業規模や業種を超えて必要となっていることが見えていると考える次第です。

 

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