SWOT分析の、知的資産経営における作成と利用のヒント(2)
【今日のポイント】
2回に渡ってお送りしているSWOT分析の作成と活用のヒント。
後半の今回は、SWOT分析を、知的資産経営(見えない強みの可視化と活用)の視点からみた作成面の続きと活用面について、お話してきたいと思います。
なお、前回のトピックスは、以下からご覧いただければ、大変幸いに存じます。
https://wp.me/p9D2bS-2lH
【目次】
1.社外からの情報収集のヒント(社外情報のアンテナの張り方の続き)
1-1.他の分野から自社事業向けのヒントを得る方法
1-2.専門家の力も借りる3.SWOT分析から価値創造ストーリーへ
3-1.SWOT分析の結果を用いて自社の知的資産から強みを見つける(過去⇒現在の流れ)
3-2.自社の将来について「誰に」「何を」「どのように」を整理する
3-3.将来と現在の間の流れを逆算して描いてみる(どうやって到達するのか、道筋をつける)
3-4.数字で裏付けをとり、中期・長期の事業計画に落とし込む
1.社外からの情報収集のヒント(社外情報のアンテナの張り方の続き)
ここでは、前回の「2-3.社外情報のアンテナの張り方(情報収集方法)~ツールとその使い方~」
の続きとして、他分野の情報から自社にとってのヒントを見つける方法と、外部専門家の利用についてお話いたします。
本章では、自分があまり詳しくない分野の知識から、どのようにヒントを得るかということを少しまとめてお伝えいたします。
1)水は高い所から低い所へ:抽象度の高い学問領域からの手法の導入
数学のように抽象度が高い学問の方が、モデル化などの解析手法も発達しやすく、汎用性が高いため、自然科学では、数学⇒物理学⇒化学⇒生物学⇒その他工学系の方向に学問の手法や考え方がトランスファーされる傾向があります。
この方法は、自社に関係する工学分野の動向を考える際に、これらの領域よりも抽象度の高い学問領域の動向を見る事で参考にするといった使い方が有効かと思います。
2) 自分野より周期の短い分野から理論を導入する
これは、PDCAなどのマネジメントサイクル(設備投資など経営上の打ち手の結果が現れる時間)が自業界より速く回っている業界(例えば装置産業に対するサービス産業やIT業界)の経営手法・理論、現象を自業界の経営の参考とすることがこれに当たります。
3)最近自業界で重要とされていることに、以前から取り組んでいる他業界から
例えば、生産財の販促については、顧客へのアピールという点で一日の長がある、消費財の業界の販促手法を取り入れると高い効果が期待できるかと思います。
また、生産現場における品質管理手法をサービス産業の品質管理や経営管理に応用することや、発想法の手法をマーケティングや商品企画に利用する例も良く見かけるところです。
4)お金の集まっている分野から手法を導入
お金が集まる所には才能も集まれば競争も激しいわけで、ビジネス手法や競争力強化につながる手段の開発にも自然お金と人がかけられ、洗練されてきます。
例えば、原子力産業、軍需産業などからの技術移転は古典的といっても良いほどかと思います。
5)とにかく自業界、自分の業務分野から離れた業界、分野
自分に近い領域は、競争相手も同じ情報を持っていることが多く、アイデアの差別化要因にはなり難いと思います。
アイデアに行き詰まったときには、意識して自分からなるべく離れた分野から参考例を探してくるのも一つの手かと思います。
6)お手本を探す前に:「切り口」の準備、「目的のメタ化」
以上ヒントや手法を探す分野についてお話ししましたが、
一見関係の無さそうな分野からもヒントを得るには、現在自分が持っている問題の本質は何か、目的は何かを押えた上で、抽象化、一般化(メタ化)するとヒントを見つけ易くなります。
企業を取り巻く環境は急速に変化し、かつ今まで想定していなかった要因にも目配りが必要になっています。
そのような中で、自社だけで情報収集することには限界がありますので、ぜひ外部の専門家のアドバイスや情報提供も活用していただきたいと思います。
各業界だけでなく、人事・会計・研究開発など業務別や起業・事業承継・DX導入などの目的別など多くの分野の専門家が行政・民間問わず、支援サービスを提供していますので、
自社にはどのような支援が必要かということの相談も含めて外部の専門家を利用することをお勧めする次第です。
上記のような手段で集めた情報を分析・解釈する具体的な方法は、業界や自社の置かれている状況、目的によっても変わって来ますので、ここでは一般的なポイントを簡単にお話しします。
● 集めた情報を「抽象化」して「その情報の本質はなにか」を考える
具体的な情報は、特に他業界などから持ってきた場合、前述の抽象化や一般化によって、「その情報の本質的な内容はなんだろうか?」と考えて、キーワード化し、さらに、そのキーワードと関係する他のキーワードなどの相関図などを書いてみることが有用かと思います。
● その本質は?と考えたら今度は自社の課題に落とし込む
分析・解釈して得た情報の本質的な部分について、今度はそれを自社の課題に当てはめて、
「その情報が取り扱っている問題は、自社のどの問題に対応するのか」
「その情報が提示している解決策は、自社のどの問題の解決に役立ちそうか」と考える段階に入ります。
このときに重要なのは、自社の課題をなるべく細かいプロセスやタスクに分けて当てはめてみることとかと思います。
次にもう一度その事業や業務全体の流れの中でその打ち手が有効か、他のプロセスと整合が取れるかをチェックするという順番で得た情報を使ってみることをお勧めする次第です。
この、価値創造ストーリーは、業界、企業、事業などによって大きく異なる部分ですので、ごく一般的な部分についてお話したいと思います。
3-1.SWOT分析の結果を用いて自社の知的資産から強みを見つける(過去⇒現在の流れ)
「知的資産」は中々目に見えにくい資産なので、具体的に何が自社の知的資産なのか、また「自社の強み」と知的資産は何が違うのかという点がよく分からずお悩みの方がいらっしゃるかも知れません。
以下にお話しすることは、知的資産経営の一般的な解説とは少し異なるかもしれませんが、私なりの意見としてご参考になれば幸いに存じます。
● 他の「資産」、「経営資源」からのアナロジー
知的資産と事業や経営はどう結びつくのかを考える際には、お客様に自社のサービスや商品を選んでいただくために、知的資産と同じく事業・経営に必要な資産である
「金融資産(カネ)」と「設備(モノ)」を、自社ではどの様に使っているかということを振り返ってみることで、
「自社の強みを作り、維持するための資産の使い方」という視点で「知的資産」を見てみることがやりやすくなるかと思います。
● 具体的な作業に落とし込む
上記の、相対比較しながらの自社の状況を分析する作業は、SWOT分析でも行えます。
自社の内部、外部の状況と今後の変化の方向を想定して、自社の人材、取引先との関係、自社の社内の仕組みをどの様に使い、改善していけば良いかを考えることが、自社の「知的資産を強みに変える」ことに繋がる方法になるかと思います。
3-2.自社の将来について「誰に」「何を」「どのように」を整理する
ここでは価値創造ストーリー作成の前半部分に焦点を当ててお話ししていきます。また、クロスSWOT分析もこの部分での各段階の中で使えるかと思います。
まずは、「誰に(お客様)」、「何を(提供価値)」、「どのように(提供方法)」の3つの項目について、自社の将来像を描くところから始めることになるかと思います。
この3項目は、事業計画を作成する際の自社の事業ドメインと呼ばれることもあります。
上記の「誰に(お客様)」は、直接の取引先だけでなく、その事業のバリューチェーンにおけるエンドユーザーも含めて考えることで、視野を広げるとともに現在だけでなく将来も含めての自社事業の想定がやりやすくなるかと思います。
さらには「何を(提供価値)」を考える際にもアイデアを広げやすくなります。
「何を(提供価値)」については、お客様が自社の商品・サービスを使う場面によって変わってきますので、まずはお客様の使い方(TPO)を具体的かつ複数想定し、その想定(仮説)を検証してみることが、自社の提供価値を考える上で有効かと思います。
「どのように(提供方法)」は、自社の商品やサービス自体だけでなく、どのようにお客様に自社が提供できる価値を知っていただくかということも含まれて来るかと思います。
上記の提供価値の考え方と提供方法については、マーケティングの分野で多くの書籍やネット上での情報などもありますので、そちらをご参照いただければと思います。
また、ネットとリアル双方を利用することが中小企業にとっても必要かつ有効となっており、その傾向はますます強まることは間違いないところかと思います
3-3.将来と現在の間の流れを逆算して描いてみる(どうやって到達するのか、道筋をつける)
自社の将来のお客様と提供価値と提供方法(事業ドメイン)に関する将来像が具体的に描けたら、次に現在から将来までの自社の事業ドメインの移り変わりを描く段階に入ります。
ここで、自社の将来の事業ドメインと、現在の事業ドメインとのギャップを明確にして、将来像から逆算しながら現在の事業までの流れを作ることが重要かと思います。
このフローでSWOT分析を利用する際には、現在のSWOTとは別に、自社が設定している将来の時点でのSWOTを作成し、その外部環境項目である機会(Opportunities)と脅威(Threats)に上記の外部環境を入れて、自社の提供価値やビジネスモデルを考えてはいかがかと思います。
そして、SWOT分析と他の分析手法の分類の組み合わせも活用しながら
知的資産の種類(人的資産、構造資産、関係資産)に分類して各項目ごとに課題を洗い出し、検討のうえ再度統合して、自社のビジョンなどから全体最適化を図るというサイクルを回してはいかがかと考える次第です。
3-4.数字で裏付けをとり、中期・長期の事業計画に落とし込む
価値創造ストーリーを作成したら、その実現を図るというプロジェクトを管理するための指標(KPI=Key Performance Indicator)の設定を行い、自社の中長期の事業計画に落とし込むという作業に入ってきます。
ここまで来ると先ほど描いた将来像を実現するためのハードルなども明確になってくるので、一度描いた価値創造ストーリーも修正する必要が出てくるかも知れません。
ここまで、知的資産経営報告書や経営デザインシートで利用するSWOT分析と価値創造ストーリーの流れについて、情報の収集・利用の視点からお話ししてきましたが、
今までお話しした流れは一方向ではなく検討のサイクルを回しながら、具体的かつ夢のある将来像と、そこに至る道筋を作るお役に立てば、大変幸いに存じます。
なお上記の内容について詳しく知りたい方は、以下の無料でご提供中の小冊子に記載しておりますので、ご覧いただければ、大変幸いに存じます。
『知的資産経営のツールの使い方~SWOT 分析と価値創造ストーリー』
詳しくは、以下からご覧ください。
『知的資産経営のツールの使い方~SWOT 分析と価値創造ストーリー』小冊子の詳細・申込はこちら
https://wp.me/P9D2bS-24S
また、上記の小冊子作成後に掲載した以下のブログトピックスもご参考になれば幸いに存じます。
『経営デザインシート作成テキストから考える、「キーワードの選び方と組み合わせ方」』
https://wp.me/p9D2bS-27x
『未来予測におけるフレームワークや情報源のブラッシュアップとプランBの必要性』
https://wp.me/p9D2bS-2eI
『Q&A>未来予測に必要な「見える化」の対象にはどんなものがあるか?』
https://wp.me/p9D2bS-2hf
・SWOT分析を、自社の見えない強みを可視化・活用する知的資産経営の視点からみた作成面の続きと活用面の後半では、社外情報の収集のヒント、集めた情報の分析・解釈方法、SWOT分析結果から価値創造ストーリーへの流れを取り上げる。
・自社事業と異なる分野からの情報収集は、以下のような分野から収集することが、視野を広げる上で有効。
自社よりも抽象度の高い分野やビジネスのサイクルの短い分野
自社の課題に以前から取り組んでいる分野
お金と人材が集まっている分野
自社の業界や自分の業務分野から離れた業界、分野・情報収集の前に情報収集の目的(課題)の切り口の設定や目的の上位概念化(メタ化)も有効。また、外部専門家も必要に応じて利用する。
・集めた情報は、一旦抽象化してその情報の本質を考え、そこからもう一度自社の課題に落とし込むための具体化のステップを踏むと利用しやすい。
・こうして集めたSWOT分析の情報を価値創造ストーリーに繋げる方法は、業界や企業、その置かれている状況で大きく異なってくるが、
「目に見えない強み」である知的資産でも、「他の資産」、「経営資源」での検討方法からのアナロジーなどを利用して、自社の将来の事業ドメイン(誰に、何を、どのように)について整理していく。
・自社の将来の事業ドメインから、現在とのギャップを洗い出して、逆算しつつ課題設定と事業計画(KPIの設定など)に繋げていく。
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当研究所として推薦するものではありませんので、他の選択肢や導入の要否含めて、自社の状況に応じてご検討いただければ、大変幸いに存じます。