リアルテックファンドの知財支援機能にみる知的財産の多面的な活用方法

【今日のポイント】

下町ロケット」の神谷弁護士のモデルにもなった「内田・鮫島法律事務所」と組んで、知的財産戦略の構築支援を開始したリアルテックファンド

地銀等と同様に、知的財産に関するハンズオン支援が、金融の世界でも始まっています。
知的財産戦略と事業戦略の連携は企業規模を問わず、今後さらに重要になるものと考える次第です。

● リアルテックファンド、知財支援機能立ち上げ

2019/2/19の日経に表記の記事が掲載されていました。

(引用は『』でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)

『技術開発型スタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタル(VC)のリアルテックファンド(東京・港)は19日、投資先の知的財産の戦略構築を支援する取り組みを始めたと発表した。

技術法務に詳しい内田・鮫島法律事務所(東京・港)と組み、投資先のスタートアップに対し技術の査定や実際の特許の権利化などを支援する。VCが知財分野の支援をするのは珍しい。』

リアルテックファンド社のリリースはこちらです。

リアルテックファンド、内田・鮫島法律事務所と連携し、知財ハンズオン支援“Patent Booster”を開始

『研究開発特化型ヘ゛ンチャーキャヒ゜タルファント゛「リアルテックファント゛」(代表:永田 暁彦)は、技術領域の分野を問わず技術法務サービスの提供が可能な、弁護士法人内田・鮫島法律事務所(代表:鮫島 正洋)との間で、地球と人類の課題解決に資するリアルテックベンチャーによる技術の社会実装を最速で実現する取り組みとして、Patent Boosterを開始することをお知らせいたします。

リアルテックファンドは地球と人類の課題を解決するリアルテックベンチャーを支援し、エコシステムの実現することを目指し2015年に設立されました。

リアルテックファンドは技術の社会実装に必要な様々な支援を行っており、これまでに優秀な人材・多用な経験を持った大企業との連携、ベンチャーのビジョン構築や技術分野におけるPRの支援などのクリエイティブ支援を実現し、最近はベンチャーの成長に応じてキーマンを採用し組織作りを支援するHR boosterの取り組みを開始しました。

これに加え、新たにリアルテック領域に不可欠な知財ハンズオン支援”Patent Booster”を実現することにより、事業戦略と一体化した知財戦略を早期に立案・実行し、世の中を変える素晴らしいテクノロジーの社会実装をより確実に、迅速に行うことを可能とします。

コメント

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 鮫島 正洋 氏
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あらゆる事業活動において、競争力を付与するために必要なことは知財を意識し、これを管理・活用することです。

特に、リアルテックベンチャーではこのような観点からの知財活動・戦略が重要であると考えておりますが、Patent Boosterに参画することによって、弊所の蓄積してきた様々なケースやノウハウにより、リアルテックベンチャーのためのエコシステム形成に貢献できるものと考えております。

リアルテックファンド 代表 永田 暁彦 氏

リアルテックファンド最大の価値は資金提供ではなく、ベンチャーと同じ未来を見つめ、その実現のために必要なあらゆる支援を主体的に行うことだと考えています。

これまで豊富なドメイン知識を活かした事業連携や研究開発支援、ベンチャーの価値を最大化させるクリエイティブやPR、HRの機能を取り込んできました。

そして今回、リアルテックベンチャーに必須である知財を担う、最強の座組みを内田・鮫島法律事務所様と構築することができました。ベンチャーの革新的な技術が法務と融合することで、社会実装までの期間が急激に短縮されると確信しています。』

信金の知財評価にみる「支援の仕組み」を知っておく効果
でも、中小企業が持つ知的財産を評価し、融資の判断材料や経営指南につなげる動きについてご紹介しましたが、知的財産の取得と活用を支援する仕組みづくりが各所で進んでいることが窺われます。

● 知財の役割を知的資産経営の視点も含めて見てみる

中小企業やスタートアップにおける知的財産の役割・機能を、知的資産経営の視点も含めて見てみると、

・人的資産の視点:社内の技術と自社ビジネスの関係(技術を事業にどう役立てるか、どんな技術が自社の事業に必要なのか)に敏感になるという社内意識の醸成や、自分の技術が商品以外の形で世に出るという点で技術開発担当者のモチベーションアップに貢献します。

・関係資産の視点:取引先など他社との連携や、エコシステム構築の際のツール、取引材料として知的財産を使うことも有効な手段となります。

・構造資産の視点:自社事業にどんな知的財産が必要でをそれを社外から調達するのか、それとも自社で開発するのかといったことを検討し、実施する仕組み、制度を作ることで、
ビジネスニーズ、事業ニーズから技術開発のテーマを考え、技術開発を行い、事業化につなげるという一連の流れや仕組みを構築することが可能となります。

その他にも、

・競争力強化、参入障壁:技術を権利化することで、他者の市場参入の障壁となり競争力強化に繋がります。

・リスク回避、リスク予防: 出願時に他社の特許を調べたり、特許庁の出願審査で拒絶通知を受けることとで、他社の特許を把握し、自社事業において第三者の権利を侵害するリスクを低減することも期待できます。

なお、特許出願においては、早期審査制度を活用すれば、迅速な権利化と上記の他社特許の把握が可能になります。

今後、中小企業にとっては、特許費用の削減の施策も追い風になるかと思います

もちろん、内容が公開される特許と秘匿すべきノウハウとの使い分けには注意が必要ですね。

エアロネクストの知財戦略にみる一貫したブランド構築戦略の重要性
で、ブランド構築の面から知財戦略の重要性についてお話しましたが、

使い古させれた言い回しの感もありますが、

経営/事業戦略、研究開発戦略、知財戦略の三位一体は、企業規模を問わず今後ますます重要となることを改めて認識した次第です。

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