中国の月着陸にみる高度な課題設定という世界情勢を見るときのヒント
【今日のポイント】
中国の宇宙開発は、米ロと肩を並べるか、一部追い越す勢いがありますね。
月の裏側への着陸や、火星探査のような難度の高い課題は、それ自体が科学技術の発達を促す貴重な資産ですので、AI・IoTと同じく、今後の中国の動向は要注目です。
2019/1/19の1日5分ビジネス英語に表記の記事が掲載されていました。
中国の宇宙船が月の裏側に始めて着地出来たというもの。
1969年に人類が初めて月に着陸し、その後火星の先まで探査機が飛んでいる時代に、今回月の裏側に初めて着地したというのは、意外な印象も受けますが、身近なところに難度の高いミッションが有ったものだと、改めて宇宙開発の奥深さを感じた次第です。
● 高度な課題設定による科学技術発展
以下の記事にもあるように、今回の月着地で、中国はその宇宙開発における科学技術の高さを世界に示したわけですが、
「ただの着陸ではない ── 中国の「月の裏側」探査が世界を震撼させたワケ」
今回のトピックスから私が最も関心を持ったのは中国が科学技術を発展させるための舞台として宇宙を活用しているということです。
上記の記事からも、中国の宇宙開発を含めた先端科学技術の高さと開発意欲が窺われます。
「「火星探査のためのロボット蜂開発」に思う「開発環境・開発課題という資源」」
や、
「イケアとNASAのコラボにみるイノベーションに有効な方法」
でもお伝えしたように、
技術や社会、市場の変化によって、いままで事業上有益な「資源」と見られなかったものが、新たな「資源」として価値を持ち、構築競争、あるいは争奪競争の対象になっていくという視点からは、
「火星探査」や「裏の月面着陸」といった「開発環境」「課題」も新たな「開発プラットフォーム」としての「資源」として捉えることも出来るかと思います。
宇宙開発は非常に難度が高い課題を設定する場になるので、宇宙空間での利用にとどまらず、AI・IoTのように、幅広い分野に活用される先進科学技術の発展に寄与する可能性が高いかと思います。
● 中国の科学技術動向把握の重要性
最近はAI・IoTの分野でも中国のニュースを目にすることが多くなってきたかと思います。
今回の宇宙開発など、中国は幅広い分野で科学技術の開発を進めており、知的財産面でも世界での存在感を増していることが、最近の米中貿易戦争の背景にあるという記事も最近目にしますが、私もその様な面があるのではと最近感じています。
AI・IoTや宇宙開発などで、中国が有利な位置を占めることが、日本を含めて世界に与える影響も大きく、それだけに今後欧米だけでなく中国の動向も見ていかなくてはと考える次第です。
● 関連する本ブログのトピックス
・「「火星探査のためのロボット蜂開発」に思う「開発環境・開発課題という資源」」
火星で複数の蜂型ロボットを飛ばして通信ネットワークを構築し、データ・サンプルの収集を行うというNASAの構想から、難度の高い課題がブレークスルーやイノベーションを起こすための資産となるということについての考察。
・「イケアとNASAのコラボにみるイノベーションに有効な方法」
火星探査機の居住空間設計をスペースの制約が高い都会の住宅設備や家具の開発に転用する、宇宙開発の民生用の連携によるイノベーションの取り組みのトピックス。
自社の知的資産が適用される強みを更に極端に進めると、どんな分野ではその強み実現しているか、
あるいは必要として研究されているかが見えてくるので、例えば宇宙開発などその分野の先達とコラボすることで、自社の知的資産と強みにイノベーションを起こす機会を得た事例のご紹介。
・「公正取引委員会の異業種連携指針策定にみるビッグデータが変える市場競争」
AI・ビッグデータによる企業間、国家間の競争の変化から、最近の米中貿易戦争における知的財産の位置づけについて、交渉の手段ではなく交渉の主目的ではないかと、私の印象も変わってきたことをご紹介。
・「米中貿易戦争、AI・IoTにみる新たな「資源」」
米中貿易戦争でご案内の通り、エネルギーや食料などの資源にかかわる「知的財産」も重要な資源として、資源獲得競争に組み込まれて来ています。
知的財産、個人情報、データなどの無体物(形のない、見えないもの)が有用な資源となっている現在、特に知的資産については、「資源」となる対象の広がりと変化の影響を大きく受けるものであり、アンテナを広く張っておく必要性があることをお伝えしています。