トヨタの車間通信技術米国導入棚上げにみるエコシステム間競争における通信規格の影響拡大
【今日のポイント】
トヨタ自動車の、米国における車間通信技術「DSRC」搭載計画中止の記事。
V2Xにおける5Gとの競争の状況は厳しいようです。
業界横断的なエコシステムの構築競争において、他のインフラやサービスと連携するための通信規格の影響が拡大していることが窺えます。
2019/4/27のロイターに表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『トヨタ自動車は26日、交通事故の低減に向けて、2021年から車間通信技術「DSRC」を米国で販売する車両に搭載する計画を中止すると発表した。 』
トヨタは、自動車業界全体のコミットメントや連邦政府のサポートが必要ともコメントしたと報じています。
DSRCは、トヨタがITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の中で開発を続けていた、車間での狭域通信(Dedicated Short Range Communication)技術で、現在はConnected CarやV2Xなど交通インフラ以外との連携も含めて開発・普及に取り組んでいます。
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『ITSとは』 (特定非営利活動法人 ITS Japanサイト)
「日本のITS」の過程とITSを支える3つの柱(ITS Japanサイト)
● 通信規格同士の競合
トヨタは、日本国内中心にDSRCの開発・普及を進めていましたが、以下の記事などが報じているように、V2Xに使用する通信規格は、トヨタが進める地域通信規格のDSRCに対して、5GAAが進める携帯電話(セルラー)の通信規格5Gとが競合しています。
現時点ではDSRCの旗色が悪いのではとの印象を今回の記事から受けた次第です。
『V2Xはいかにあるべきか、トヨタは北米もDSRC、5GAAはセルラーの優位性を強調 (1/3)』
2018/12/5のMONOistの記事。
『自動車業界が5Gに手のひらを返した「MWC 2018」、そしてDSRCとの選択が迫られる (1/3)』
2018/3/27のMONOistの記事
● 業界横断のエコシステム競争における通信規格の影響拡大
今回の記事や、上記の記事からも、スマートシティやエンターテイメントなど多くの業界を巻き込んだエコシステムおよび通信インフラ競争の一部に自動車業界のV2Xも組み込まれていることが窺えるかと思います。
DSRCはITS通信事業の中で、国交省や総務省など日本の行政も関与してきた規格ですが、世界規模での社会インフラ共通の通信規格としては、
韓国のSKテレコムと米大手通信会社ベライゾンコミュニケーションが、それぞれ世界初の5Gサービスを2019年4月3日に開始したことを報じた、2019/4/11の1日5分ビジネス英語のトピックス『世界初の5Gネットワーク』にも見られるように、5Gが世界標準になりつつある見える中、V2Xも他のインフラやサービスとつながるためにはその流れに乗らなくてはならなくなってきていることかと思います。
● 国内市場から海外展開というビジネスモデルへの影響
上記は交通システムにおけるエコシステム間の競争の事例ですが、日本の中で技術力を磨き、実績を積んでから世界に打って出るというビジネスモデル(国際競争モデル)が、世界の技術革新と社会実装のスピードに追いつかなくなって来ている可能性が、今回の5G等の通信規格だけではなくAI・IoT、XRなどの分野にもあるかと思います。
通信規格やAI・IoT、XRでの規格、標準化の動きも注目すべきと改めて感じた次第です。
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