ＡＩ、ＩｏＴの活用において出せるデータと出せないデータとは？
● 富士通が、作業員の熱ストレスレベルをＡＩ技術で推定する新アルゴリズムを開発
富士通は、同社のＡＩシステムの「Human Centric AI Zinrai（ジンライ）」を活用した、警備業務など継続的な作業における熱ストレスの推定を行う新しいアルゴリズムを株式会社富士通研究所と共同で開発し、7月下旬より提供を開始すると発表しました。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/07/12-1.html
同社のリリースでは、今回の熱ストレスレベル測定技術とＡＩの活用方法を以下のように紹介しています。
（引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様）
「今回開発した新アルゴリズムでは、時間経過とともに蓄積する熱ストレスのレベルを推定することができるようになったため、夏場の屋外での警備業務など継続的な作業を行う現場により適しており、従来のアルゴリズムと併せて幅広い現場での安全管理に活用することができます。
今回、蓄積した熱ストレスのレベルの推定を行うために相関関係が見えにくい多様なデータを扱うため、AI技術を活用し、専門家の知見を基に機械学習させることにより、熱ストレスが高い場合の特徴を抽出し、推定ロジックを開発、労働科学の専門家が行うような推定が可能となりました。」
ＡＩによって、時間経過による熱ストレスの蓄積の推定という新しい情報の取得が可能になり、これによって、継続的な作業を行う際の熱ストレスの管理という新規の市場を開拓したものです。
● 作業員の身体情報というデータ、お客様の身体情報というデータ
上記のサービスの対象は、リリース記事によれば、「夏場における工事現場や屋外イベントなどの警備・イベント運営に対する熱中症対策」のニーズを持つ顧客を想定していますが、
同社が使っている腕に装着するデバイスが得ているデータにもよりますが、通常のスマートウォッチで得られるデータと、対象とする場所にセンサーを設置して得られる情報（局所的な日照、気温、湿度など）とを組み合わせれば、イベントに来ているお客様の熱中症予防などにも使えそうですね。
このような横展開を考える上で、通常考慮すべき、作業員の場合と一般ユーザーの場合の費用対効果の違いに加えて、いわゆるパーソナルデータの扱いとして、一般ユーザーの身体情報をどこまで取得し、どのように利用するかによっては、このようなサービスに出せる場合と出せない場合が出てくる、あるいは秘密保持や個人情報保護の観点からデータを出すことに制約が出て来ることも想定されます。
また、データの所有者は誰か、一旦学習したＡＩシステム（学習済みモデル）をサービスに使って、そこから得られたユーザーのデータで更に学習させた場合のシステムやそこから得られるアウトプットの所有権、利用権と言った問題も、特にＢ２Ｂのビジネスでは出てきますね。
この辺については、2017年5月に、経産省から「データの利用権限に関するガイドラインVer1.0」というのが出ていますので、関心のある方は一読をお勧めします。
http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170530003/20170530003.html
● ＡＩによる知的資産の新しい共有
知的資産経営においては、他社の知的資産の活用は、主に関係資産の中で捉えられるかと思いますが、
今後は、データやＡＩという切り口から、既存の知的資産を、他社の知的資産やユーザーの情報などと組み合わせて新しい価値を創造することが、新規市場の開拓や事業革新の中で求められてくると考えています。
現時点では、そのようなコラボレーションはまだ、法整備が追いついていないので、相対契約を中心に対応していくことになりますが、こういった取り組みを怖がらずに、かつリスクをきちんとマネジメントしながら進めていくには、先日お話した情報リテラシーや、知的財産を中心に、個人情報保護などにも配慮し、自社と他社がＷｉｎ－Ｗｉｎの関係を持てるようなコラボレーションを考え出し、契約などの形に落とし込めるスキルも重要になってくると考える次第です。
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