『ファクトルフルネス』を読んで-世界と自分を知る鏡(前編)

【今日のポイント】

『ファクトルフルネス』の読書感想(前編)。

データに基づく分析・判断の方法を解説した本書は、事実を正しいデータに基づいて適切に捉え、判断するために必要な意識や視点を、認識を歪める10個の本能を挙げて、その対応策として紹介しています。

判断力をアップさせたい方だけでなく、問題を抱えてストレスを感じている方にとっては癒やしの示唆も得られる貴重な一冊として、自信を持ってお薦めする次第です。

※>本トピックスは長文のため、2回に分けてお送りいたします。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る慣』(ハンス・ロスリング; オーラ・ロスリング; アンナ・ロスリング・ロンランド著) を読みました。

著者のハンス・ロスリング氏は、医師、グローバルヘルスの教授、そして教育者としても著名である。世界保健機構やユニセフのアドバイザーを務めた方。

共著者のオーラ・ロスリング氏はハンス氏の息子で、アンナ・ロスリング氏はその妻です。

印刷版は400Pとかなりの大部ですが、それだけの価値があり、数多くの貴重な示唆を得ることができました。

本書の構成は以下の通りです。

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

『はじめに

イントロダクション

第1章 分断本能「世界は分断されている」という思い込み

第2章 ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

第4章 恐怖本能 危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み

第5章 過大視本能 「眼の前の数字が一番重要だ」という思い込み

第6章 パタ ーン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる 」という思い込み

第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている 」という思い込み

第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる 」という思い込み

第9章 犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事は解決する 」という思い込み

第1 0章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる 」という思い込み

第 1 1章ファクトフルネスを実践しよう:ファクトフルネスの大まかなルール

おわりに

謝辞

訳者あとがき、付録、脚注、出典』

⇒本文はもちろんのこと、付録と脚注、出典が大変充実しています。

 

本書からの気付き

イントロダクション

・『瞬時に何かを判断する本能と、ドラマチックな物語を求める本能 が、「 ドラマチックすぎる世界の見方」と、世界についての誤解を生んでいる。』

⇒我々の脳に組み込まれている瞬時に判断を下すための機能によるものであることを意識することを説いています。

これは、樺沢紫苑さんが常々「我々の脳や体は原始時代の生活に適応するようになっていて、まだ現代社会の生活に適応するところまで進化していない」と説かれていることとも共通する認識かと思います。

 

第1章 分断本能

『この4つの所得レベルというシンプルな考え方こそが、「事実に基づく世界の見方」を支える、ひとつめにして最も重要な柱だ。

本を読み進めていけばわかるが、この4つのレベルを使うだけで、テロから性教育まで、世界についてさまざまなことを理解できるようになる。』

⇒二分法や二者択一による認識のバイアスへの対応として、世界を4つの所得水準に分けて考えることを提案しています。

確かに、2つではなく、3つあるいはそれ以上のグループに分けて考えることで、オール・オア・ナッシングなど二分法の問題に対応することは、この所得レベル以外においても有効な方法と思います。

第2章 恐怖本能

『世界は思っているよりずっと 良いと知れば、なんだか 元気も湧いてくる。 統計は、ネットから無料で手に入る「幸せの薬」だ。』

⇒著者は、『セラピーとしての統計』と、事実に基づいて客観的に判断するという正しい認識の必要性の他に癒やしの効果も期待できる(データの数字や過去の写真の効果)と語っています。

このことは、データだけでなく、今後SNSにおいて、動画や画像が年数を重ねて蓄積され、マスメディアによらず共有される事による、統計データ以上に過去からの変化を感覚的にも把握し、そこから癒やしを得られる可能性があることをも示唆していると感じた次第です。

第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

『仮に自分に向かって石が飛んできたら、あなたはどうする ?
おそらく無意識に、あなたの目と脳が石の軌道を先読みし 、自分に当たりそうなら避けようとするだろう。

数字も表もグラフも必要ない 。

このようにわたしたちは、視覚を頼りに、何かの軌道を反射的に予測することができる。

おそらく、ご先祖さまが生き延びるのに欠かせない能力だったのだろう 。
そしていまでも 、たとえば交通事故を避けるのにこの能力は役立つ 。

運転中は、ほかの車が数秒後にどう動くかを予想し続けなければいけないからだ。

しかし現代では 、この「直線本能 」は役に立たないことも多い 。』

⇒物事は、直線的に変化するのではないということを、その変化のパターンとして、直線型、S字型、すべり台型、コブ型の4つのグラフの形に分けて、どんな現象がそれぞれの変化のパターンに当てはまるかを説明しています。

このように、複数の変化のパターンを知っておくだけでも、データの読み方や、そこから今後の変化を予測する際の判断力が高まることが期待できるかと思います。

第4章 恐怖本能

『恐怖本能は諸刃の剣だ。

恐怖本能があるおかげで、世界中の人々が助け合うことができる。
そしてそれ が、人類の進歩につながる。

一方、恐怖本能のせいで、「年間4000万機もある、無事に着陸した飛行機の数々」にわたしたちはなかなか気づかない。

「年間 33 万人もいる、下痢で亡くなる子供たち」が、テレビに映ることもない。
それが、恐怖本能の恐ろしさだ。』

⇒後述の過大視本能や焦り本能とも関係しますが、感情に囚われることの危険性と冷静な分析の重要性を説いています。

本書にも記載されていますが「リスク=危険度(発生時の影響度)×頻度(発生確率)」という、リスク評価の基本を押さえて、危険(リスク)と「恐ろしさ」を峻別することの重要性を再認識した次第です。

第5章 過大視本能

『過大視本能は、2種類の勘違いを生む。

まず、数字をひとつだけ見て、「 この数字はなんて大きいんだ」 とか「なんて小さいんだ」と勘違いしてしまうこと。

そして、ひとつの実例を重要視しすぎてしまうこと。』

⇒これも、複数の視点を持つこと、複数の情報源を持って物事を観ることの必要性を窺わせます。

また、そこには時系列での変化も含めて分析・判断することが必要と考える次第です。

以上のように、本書では、人間の認識を歪める各種のバイアスを挙げつつ、その問題点と対応策を説いています。

私は特に、『セラピーとしての統計』『4つのグラフ(変化)のパターン』が大変参考になりました。

事実に基づいて冷静かつ客観的にものを見ることが、事象の理解だけでなく心の平穏にもつながるという指摘を大変心強く感じた次第です。

後編では、第6章の「パターン化本能」から第11章の「ファクトフルネスを実践しよう」までの記載から得た気づきについてお話する予定です。

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