『ファクトルフルネス』を読んで-世界と自分を知る鏡(後編)

【今日のポイント】

データに基づく分析・判断の方法を解説した『ファクトルフルネス』の読書感想その後編。

認識を歪める10個の本能のうち、第6章の「パターン化本能」以降の章をご紹介しています。

判断力をアップさせたい方だけでなく、問題を抱えてストレスを感じている方にとっては癒やしの示唆も得られる、貴重な一冊として、自信を持ってお薦めする次第です。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

今回は、前編に引き続き、以下の構成のうち、第6章の「パターン化本能」以降の章で私が得た気づきをご紹介いたします。

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

本書の構成は以下の通りです。

『はじめに

イントロダクション

第1章 分断本能「世界は分断されている」という思い込み

第2章 ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

第3章 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

第4章 恐怖本能 危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み

第5章 過大視本能「眼の前の数字が一番重要だ」という思い込み

第6章 パターン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる 」という思い込み

第7章 宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている 」という思い込み

第8章 単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる 」という思い込み

第9章 犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事は解決する 」という思い込み

第1 0章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる 」という思い込み

第 1 1章ファクトフルネスを実践しよう:ファクトフルネスの大まかなルール

おわりに

謝辞

訳者あとがき、付録、脚注、出典』

 

本書からの気付き

第6章 パターン化本能

『生活に役に立つはずのパターン化も また、わたしたちの世界の見方を歪め てしまうことがある。

実際にはまったく異なる物や、人や、国を、間違ってひとつ のグループに入れてしまうのだ。』

⇒普段、意識せずに使っているパターン化のリスクを指摘しています。

自分が行っているパターン化がどのようなものかを認識することはなかなか難しいと思いますが、その対応として、著者は

『認識を切り替えるには、できるだけたくさん旅をすることだ。』

と説いています。

体験による認識の変化が必要ということ、XRなどによる実際の旅行以外の体験の手段も非常に重要であり、SNSなどもこの体験の一部として活用できるものと考えています。

第7章 宿命本能

『昔ながらの 西洋」企業が、途方もないビジネスチャンスに乗り遅れつつあるからだ。

アジアやアフリカでは、史上まれに見る中間所得層の拡大から、ものすごい 事業機会が生まれている。』

⇒色々なものが、国や宗教、文化などの背景によって今後も変化しないと考えることの危険性を説いています。

そしてその宿命本能への対応として、

小さな進歩に目を向けて追跡すること、知識(特に陳腐化の早いテクノロジーや社会科学系等の知識)のアップデート、文化の変わった事例を集めることに加えて『おじいさんやおばあさんに話を聞こう』と、価値観が自分たちよりも古い人たちの話を聞くことを勧めています。

この4つ目の部分は、例えば過去の新聞等の社説や教科書などを読むことでも、価値観の変化を見ることができるのではないかと考える次第です。

第8章 単純化本能

『現実を知ることで自分の間違いに気づくこともたまにはある。

でも、たいていは意見の違う人と話し、理解しようとするうちに自分の間違いに気づくほうが多い。』

⇒著者は、一つの視点だけで世界を理解しようとする(できると思う)ことを『単純化本能』と呼んで、複数の視点を持つこと、自分の考え方を検証することが必要と説いています。

その一つの方法として、意見の違う人と話をすることを勧めています。

これは、普段と異なるコミュニティに入って行くなど、「コンフォートゾーン」を出ることに通じるものかと思います。

第9章 犯人捜し本能

『犯人よりもシステムに注目しよう。

世界を本当に変えたければ、現実の仕組みを理解することが必要だ。』

「単純化本能」とも関係しており、複雑の事象において、「特定の人・グループ」などに問題のすべての原因が集約していると考えることの危険性を説いています。

また、著者は悪いことだけではなく、良いことについてもこの「システムに注目する」ことを勧めています。

これは、なにかうまく行ったときの成功要因を理解する上でも重要な視点であり、過去の成功体験による失敗を回避する上でも必要な意識と考える次第です。

第1 0章 焦り本能

『恐れと焦りは愚かで過激な判断につながり、予想もしない副作用を生む。
(中略)
必要なのは総合的な分析と、考え抜いた決断と、段階的な行動と、慎重な評価なのだ。』

⇒著者は、感染症対応での自分の苦い経験をひきながら、焦り本能は他の本能も引き出すため、冷静に分析や判断ができなくなると警鐘しています。

そして、データに基づく客観的で冷静な分析と検討、小さな一歩を着実に重ねることの重要性を説いています。

この焦り本能は、私自身の普段の体験からも、日常の場面においても大なり小なり出会うことではないかと思います。

著者が勧めているように、「深呼吸して落ち着くこと」、「緊急かつ重要なものほどデータにこだわること」また、他の章にもあるように「複数の視点・切り口から問題を眺めること」を個人レベルでも組織風土としても持っておくことの必要性を改めて感じた次第です。

第 1 1章ファクトフルネスを実践しよう

『社員と顧客が定期的に世界の見方をアップデートすることに、企業は力を入れるようになるだろう。』

⇒著者は、今後このファクトフルネスの考え方が、企業に取り入れられて行くことで、定期的にものの見方のアップデートをステークホルダーが行えるような取り組みを企業は行うだろうと語っています。

これは、逆にこのような取り組みをしない企業は、時流や現状を見誤り、競合に遅れを取るリスクが高まることも示唆しているかと思います。

そして、著者は、ファクトフルネス(事実に基づいて世界を見る)が、いつかやって来るとの希望を、以下の2つの理由を挙げて語っています。

『ひとつは、正確なGPSが道案内の役に立つのと同じで、事実に基づいて世界を見ることが人生の役に立つからだ。

もうひとつは、もっと大切なことだ。

事実に基づいて世界を見ると、心が穏やかになる。
ドラマチックに世界を見るよりも、ストレスが少ないし、気分も少しは軽くなる。

ドラマチックな見方はあまりにも後ろ向きで心が冷えてしまう。』

この言葉は、本書の執筆を決めた後、著者が末期ガンの宣告を受けて、自身の子どもたちと本書の執筆を続けていた事を考え合わせると、大変意味深いものがあるかと思います。

頭の中だけで考え、悩むのではなく、事実を見るという行動に移すことが、問題の解決だけでなく、心の平穏にもつながるということは、ストレスにさらされている私達にとって、大変力強い励ましの言葉ではないかと思う次第です。

なお、本書の構成の紹介でもお話したように、本書は謝辞の後の付録、脚注も大変充実していますので、ご覧になることをお勧めします。

こんな方にお薦め

本書は、自分自身や所属している組織のモノの見方、考え方を改善したいと考えている方、

現在抱えている問題についてその解決にお悩みの方、

そして、普段より多くのストレスや不安を感じている方にお薦めの一冊です。

是非書店でお手にとって見てることをお勧めする次第です。

 

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