ウォルマートのロボット配送システムに考える、生産性向上の目的設定の重要性
【今日のポイント】
Amazonの競合の一つであるウォルマートのロボット配送はラストワンマイル問題の克服への取り組みと捉えられますが、このような生産性向上については、従業員のモチベーション向上や創造性の発揮のための余裕を生み出すなど、複数の切り口からその目的を見直すことも有益なものと検討をお勧めする次第です。
【目次】
1.ウォルマートの配送自動化の取り組み
2.生産性向上による従業員のモチベーション向上
3.自動化による生産性の向上の目的がコスト低減以外の分野に更に広がる
4.生産性向上の目的を知的資産経営の視点から見直す
Amazonのジェフ・ベゾス氏のCEO引退が話題になりましたが、競合の一つである、ウォルマートも自動配送などの生産性向上に取り組んでいる様子が以下の記事からも窺えるかと思います。
2021/01/29のダイヤモンド・チェーンストアに表記の記事が掲載されていました。
⇒将来的には更に設置店舗を増やしていく方針とのことで、ドライブスルー等も含めて既存店舗の多用途化を図る様子を報じています。
同社のロボット配送については、以下の記事など、以前にも採り上げられています。
・『ウォルマート、陳列棚スキャンロボットの利用を中止か–500店に導入済み』
2020年11月04日 CNET Japanの記事。
⇒色々と試行錯誤しつつ、EC含めて事業展開を図っている様子が窺えるかと思います。
・『物流現場の人手不足を解消する 「物流ロボット」の正体とは?』
2020/10/20 Rapyuta Robotics株式会社のブログ記事。
⇒ウォルマートを始め、日本企業も含めて物流ロボットの活用動向を報じています。
上記以外にも複数の記事で取り上げられていますが、今後ウォルマートがAmazonなどに対抗してどのように配送の迅速化と生産性向上を図っていくかは、他業界も含めてDXやロボット利用の参考としても要注目と感じた次第です。
ECなどの小売業だけではなく各業界でデジタル化などによる生産性向上の取り組みは進んでいますが、従業員のモチベーション向上や創造性の発揮などの視点からの取り組みも行われている事が、以下の様な記事にも見えるかと思います。
2021/2/8の美容室を基点に地域のコミュニティ作り・女性活躍・美容産業のアップデートを目指す日本美容創生株式会社は表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『日本美容創生(JBIRC)は、臨店の現状を鑑み、メーカーと美容室の信頼関係を構築し、臨店活動の生産性向上・戦略的な成長を促す「Beauty Venue M」を開発しました。』
⇒「臨店」とは、メーカーのインストラクターが美容室似趣、美容師に新製品の特長、使い方を伝えるイベントで、実演販売の場ともなっているとのことですが、バックヤードなどの関連業務の負荷を低減する為に、取引先とのやり取りにも工夫の余地がある事を示唆する事例と感じます。
・『フード産業のDXを推進する企業スパイスコード、2億円の資金調達を実施~飲食店キッチンDXと働き方改革~』
2021/2/8にフード産業のDXを推進するスパイスコード株式会社は表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
『ロカルメオーダーを使用することによって、シェフは毎朝の仕込み調理やクリエイティビティの低い業務から解放され、より生産性の高い業務に集中する事が出来ます。』
⇒シェフのモチベーション維持と創造性の向上との言葉に、生産性向上で何を実現したいか、目的設定の重要性を改めて感じます。
上記の様な動きは、健康経営®に生産性向上という手段を使って取り組む動きとも捉える事ができるかと考える次第です。
※>「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
3.自動化による生産性の向上の目的がコスト低減以外の分野に更に広がる
上記の記事からは、「自動化による生産性の向上の目的がコスト低減以外の分野に更に広がる」様子が窺えるかと思います。
今回のウォルマートのロボット配送記事のようなロボット等による省力化は、ラストワンマイルや顧客先でのピックアップの問題解決が進んでいる事を示していると共に、
企業やそこで働く人々にとって、もっと顧客提供価値とやりがいに結びつく業務に注力する要員的、経済的余裕を作り出すという側面もあるのではないかと感じます。
AIやロボットが現在の職業を代替する一方で新しい仕事を生み出す様に、
上記の美容院の商品紹介における関連業務の効率化や、レストランでシェフが雑務から解放されることによるモチベーション維持と創造性の向上など、
今後は、生産性向上で何を実現したいか、コスト低減や取引先などの関係者も含めた利便性や快適性の向上に加えて、中長期的な視点での顧客提供価値や、自社の創造性の発揮なども含めた目的設定の重要性が増すものと感じた次第です。
生産性向上の目的を知的資産経営における各知的資産の強化という視点から見ると以下のように捉えることも考えられます。
4-1.知的資産のうち、人的資産の維持・強化について
人材のモチベーションアップ、持っている能力の発揮、スキル向上などを行う場合でも、必要な資金面、時間面の余裕を作り出せることが前提になりますね。
従って、現在の事業に使っている資金や要員、時間と上記の施策を行うための資金、要員、時間のバランスを図る上で、段階的な教育、外部の人材の活用、現在の人材が既に持っている知見やスキルの再利用なども考慮しつつ、現在の事業に関する生産性向上の計画を建てる必要があるかと思います。
4-2.構造資産の強化について
生産性向上とその継続的な改善を組織の仕組として取り入れることで、企業体力の継続的な向上を図ることが期待できるかと思います。
具体的には、PDCAの各段階のチェック項目の整備、改善に関する活動とその実施者や責任者の明確化、PDCAを回す毎のフィードバックの記録と利用方法などの、仕組みの設計と運用ルールを実際の活動記録も含めてデータベース化するなどの方法で属人化を防ぎ、組織全体のスキル・知見として蓄積・活用していくことが考えられるかと思います。
4-3.関係資産の構築と強化について
顧客等関係者への提供価値の向上を通じて、自社の信頼度を高め、取引先などとの関係を強化することになりますが、生産性向上により、例えば納期短縮を図るのか、顧客に関する理解を深めるための情報収集と分析のための余裕を作るのかなど、関係資産の何を強化するために、生産性向上という手段を使うのかを明確にすることが重要となります。
また、生産性向上を事業提携などを通じて行うことで、新しい取引先などの関係資産の獲得を図ることも一つの方法として検討の価値があるものと考える次第です。
上記は知的資産経営の切り口から生産性向上の目的の見直しを図るとしたらどうするかというケースの一例ですが、
その他のマネジメントの切り口も利用して、自社の生産性向上の目的を新型コロナ下対応として行いつつも一度見直してみることは、今後の方向性を定める上でも有益ではないかと検討をお勧めする次第です。
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