出開帳や展示会に考える、文化財保護のマネタイズへの新技術適用方法
【今日のポイント】
インバウンドブームの裏で、少子高齢化による檀家や参拝客の減少により苦境に陥っている神社仏閣も多いようです。
XR(AR、VR、MRなどの総称)や3Dプリンター、キャッシュレスシステムなどを利用することで、認知度を上げるとともに新しい参拝の方法などサービスの多様化を図ることも必要になってきています。
2019/2/11 の東京新聞に表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『我孫子市の中里薬師堂にまつられている市指定文化財の仏像が十六~十九日、JR我孫子駅北口のイトーヨーカドー内にある市民プラザギャラリーで「出開帳」される。
中里地区の別当地遺跡から出土した古墳時代~平安時代の土器や、市に寄贈された手賀沼の風景画なども展示され、初日は市教育委員会の学芸員がギャラリートークで解説する。
出開帳として特別公開されるのは、薬師如来、日光菩薩(ぼさつ)、月光菩薩の薬師三尊像と、十二支の動物を飾りなどに取り入れた「十二神将像」のうち、子(ね)、丑(うし)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)の九体。市教委によると、十二神将像は江戸時代後半、三尊像はそれよりやや古いとみられている。
いずれも制作から二百年以上が過ぎ、後年の修理の際に誤って起きた頭部の入れ替わり、傷みなどが目に余るようになり、市の文化財保護補助金制度や市民の寄付金を活用した保存修復が二〇一五年度以来、進められてきた。』
補助金や市民の寄付金で保存修復を進めてきた仏像を出開帳するとのこと。
先日、2019/2/5に「利家ゆかり 神社閉鎖 参拝減「収入1000円の年も」」
との題で、中日新聞が、
加賀藩祖の前田利家が本堂を建てたと伝えられる金沢市寺町の八阪神社が昨年末、神社としての役割を終えて閉鎖され、痛みが激しく、改修費用の工面も困難なことから解体したいという宮司側と、文化財として改修・保存を希望する市が話し合いを続けていると報じていますが、
一部の人気のある神社仏閣を除けば、少子高齢化による檀家の減少や参拝客の減少など、神社仏閣の置かれている経済状況は厳しいことが窺われます。
今回の我孫子市の出開帳については、市行政と市民の方々の努力に敬意を表したいと思います。
●出開帳や展示会による公開による仏教施設や仏像保護の資金源確保
この「出開帳」に限らず、美術館の展示会で仏像を公開されることは大変多く目にしますし、私も仏像や仏画などを見にでかけますが、展示する側からすると、
展示料などの直接的な収入に加えて、その仏閣自体の認知度向上による参拝客増加の効果も期待しているかと思います。
●デジタル技術やICTによる認知度向上とマネタイズ
以前、「葬儀ビジネスフェアにみる「必ず通過するイベントという市場機会」」
の中で、 株式会社 鎌倉新書の、VRを利用した霊園の仮想見学のサービスをご紹介しましたが、SNS、YouTubeなどの動画、VRなどを利用することで、神社仏閣の観光場所としてだけでなく、ご利益も含めてアピールし、認知度を向上させることは重要な打ち手かと思います。
鎌倉新書のリリース記事
また、
「おさい銭もキャッシュレス?!スマホ決済できる神社一覧【2019】」
や
「屋台に、お寺に、山小屋に キャッシュレス決済広がる コスト低下でシステム導入が容易に」
などの記事のように、お賽銭や祈祷料などのキャッシュレス化も始まっていますね。
海外では、2018/06/08の1日5分ビジネス英語「カードを受け付けるロンドンの大道芸人」でも紹介されていたように、大道芸人にまでキャッシュレス化が始まっていますし、
日本でも、「投げ銭もデジタル時代 スマホアプリで手軽に夢を応援 「つながる面白さ」 交流のきっかけに」で紹介されている、企画に共感したら友人同士でお金を集めるアプリ「polca(ポルカ)」や、
「エンゲートがスポーツチームとファンをブロックチェーンでつなぐ”投げ銭コミュニティ”を9月に提供開始」でリリースされたスポーツチームに投げ銭できるサービスEngateのようにブロックチェーンを使った試みまで始まっています。
XRとネットでの投げ銭システムによるバーチャル参拝も今後は進むものと予想されます。
●時間と距離の制限を取り払ってみる
上記のように、その場に行かなくとも良い、というネット上の利点を活用して、バーチャルを使ってリアルの集客につなげることは、神社仏閣に限らず、
先日、
「医療分野でのAI、AR、RPAの導入にみるプロセス分解とインターフェースによる繋がりの両立の重要性」
でご紹介した医療分野など従来その場に行かなくてはならなかったサービス一般に適用できる方法です。
また、「3Dプリンターによるバチカン衛兵のヘルメットにみる伝統的デザインの復活と螺旋的発展」
でご紹介した、3Dプリンターによる伝統的なデザインの再現のように、
今は失われた仏像、あるいは改修によって変化した社殿などをオリジナルの形のモデルを3Dプリンターなどを使って再現することも、新しいビジネスモデルになり得るかと思います。
教育分野では、セミナーや対面の講義と動画の組み合わせは以前から行われているので先行例として参考になるのではないでしょうか。
自社事業においても、現在の時間と距離の制限を取り払ってみるという視点で、XRや3Dプリンターを見てみると、昔扱っていた商材や知的資産の復活や、諦めていた取引先へのリーチ、新規顧客の開拓などに繋げられるものと考える次第です。
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