高校教育改革にみるAI・IoT時代のコンセプト創出力の重要性
【今日のポイント】
Society5.0の到来の中、変化に対応できる人材の育成は大きな課題ですが、新しい技術やビジネスモデルを創出するためのコンセプト創造力を育成するためには、まずコンセプトや概念を理解できる力が必要ですね。
AI・IoT人材の確保の即効薬とはなりませんが、こういった抽象的な概念を理解し、具体的なビジネスに落とし込める人材育成は中長期的にも必要な施策と考える次第です。
2019/5/17の 日経新聞に表記の記事が掲載されていました。
AI人材強化について、学校教育の面からの施策提言が行われたという記事。
この、教育再生会議のサイトでは、この会議の趣旨について以下のように記載しています。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進する必要があります。
このため、「教育再生実行会議」を開催しています。 』
提言の概要はこちら
提言の本文はこちら
提言の概要では、
『・人口減少や少子・高齢化が急速に進む中で、地方創生を進めることが重要。
さらに、人生100年時代を迎える中、AIやIoTなどの技術の急速な発展に伴うSociety5.0が到来するとともに、グローバルな競争が激化。これらの変化に対応し活躍できる人材育成が急務であり、新たな時代を見据えた教育再生を大胆に進めることが必要。
・このような観点から、昨年8月より「技術の進展に応じた教育の革新」及び「新時代に対応した高等学校改革」をテーマに審議。今般提言を取りまとめるもの。』
と今回の提言の背景を述べています。
本提言は以下の9項目で構成されています。
(1)Society5.0で求められる力と教育の在り方
(2)教師の在り方や外部人材の活用
(3)新たな学びとそれに対応した教材の充実
(4)学校における働き方改革
(5)AI時代を担う人材育成としての高等教育の在り方
(6)特別な配慮が必要な児童生徒の状況に応じた支援の充実
(7)新たな学びの基盤となる環境整備、EBPMの推進
(8)生涯を通じた学びの機会の整備の推進
(9)教育現場と企業等の連携・協働
(8)では、学校教育だけでなく人生100年時代の生涯教育についても触れられています。
● コンセプトや概念の理解力と創造力
上記提言の「(1)Society5.0で求められる力と教育の在り方」では、
『特に、新学習指導要領において充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育については、全ての児童生徒に基盤的学力を習得させる、高度専門人材を育成する、との2つの観点から、その着実な実施を図る。
その際、データサイエンスやAIを理解する上で必要となる確率・統計、線形代数等の基盤となる「行列」等の概念や考え方を高等学校段階で確実に学ぶことができるよう、効果的な指導方法等について検討を進める。』
と、データサイエンスやAIを理解するベースとなる「行列」などの概念を学ぶ体制や指導方法の検討を提言しています。
これは、AI・IoTに限りませんが、新技術、サービス、新事業などを生み出す際にコンセプトを創出(創造)する力が求められます。
そして、コンセプトを生み出すには、まず、コンセプトや概念など抽象的な論理を理解する力が必要となることは言うまでも無いことかと思います。
今回のような数学的な素養の醸成も、そのコンセプトや概念の理解力を高める上で必要なものであり、AI人材確保という面での即効薬にはならないものの、独創力などイノベーションに必要な能力を高めるうえで、重要な施策ではないかと思いっています。
● 感性の醸成との組み合わせ
コンセプトを創造するための課題形成力は感性、価値観、美意識とも関係してきます。
その意味では、デザイン経営(経営をデザインする、経営にデザインを取り入れる)とも繋がるところがあるかと思います。
今後、コンセプトを創出する力を高めていくために、数学的な論理力や抽象的な概念の理解力と感性・美意識の向上の双方を進める必要が行政、民間ともに求められて来ていると感じます。
そして、知的資産経営においても、人的資産だけでなく、上記のスキル・能力を自社に組織的に取り入れ、活用していくための仕掛け(構造資産)や、外部の支援を活用する(関係資産)の観点から取り組むべき課題と考える次第です。
● 本ブログの関連トピックス
・『信用金庫とデザイン学校の提携にみる産学連携のチャンス』
学校(アート・デザインというシーズを持つ側)は、デザインなどの提供先のニーズを今後の学校教育=新しいシーズの開発・取得に繋げるというメリット、
中小企業側は、学校からデザインによるソリューションを提供してもらうというメリットを持っています。
このようにり、「自社の事業ニーズ」自身が、他の業界からは、貴重な知見となるということで、提携に於ける有力な「知的資産」となってきます。
・『AIによる契約作成サービスにみるAIとの棲み分け方法』
「仕事」、「プロセス」というくくりで、技術面と主に感性に根ざすニーズ面から何はAI・ICTで代替していくべきか、何は人が担当するべきものかという視点で自社の商品・サービスの展開や自社事業の生産性向上を考えることが、今後ますます必要になってくるものと思われます。
・『世界経済フォーラムのAIによる代替予測にみる広い視野の重要性』
課題設定やルールの策定というところでは、人の価値観が入ってくるため、AIでは代替が難しいということになります。
企業においても、個人においても、このように課題設定などにより自分の提供価値を置くことが、今後求められていくことが予想されます。
・『AI・IoTと人の分業のヒント: 専門家のサポートと受ける側の「感性・ビジョン」』
AI・IoTの導の際に、専門家のサポートを受けることはほぼ必須条件となってきますが、サポートを受ける側にも、AIとの役割分担として、人が行うべき事を考える際に、「感性」、「ビジョン」などを明確にし、それを伝えて共有していくことが求められてきます。
・『AI・IoT時代における「感性」と「美意識」』
「モノ売りからコト売りへ」
というのは、マーケティングで良く見聞きする言葉ですが、
「コト売り」を美や感性という視点から捉えることと、
顧客の美意識と「美」を提供する側の美意識の双方が貴重な資源となっていくというのは、AI・IoT時代において重要な視点だと思われます。
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