第一次産業へのAI・IoT適用にみる「データ管理のプラットフォーム化」の重要性

今回は、第一次産業にAI・IoTを導入する事例を参考に、知的資産のうち、関係資産の視点からデータ管理について考えてみたいと思います。

【目次】

1.「平成29年度水産白書」の公表について

2. 酪農家の生産性、AIで向上 信州大が手法開発へ

3. AI・IoT活用研究におけるコラボレーションとデータ共有

4.自社の関係資産構築において、データや知見の共有化を見直す

 

1.「平成29年度水産白書」の公表について
2018/5/25水産庁は、平性年度水産白書の閣議決定を公表しました。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kikaku/180525.html

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

全体の構成は、

『平成29年度水産の動向
(第1章)特集 水産業に関する技術の発展とその利用~科学と現場をつなぐ~

(1)水産業に関する技術の発展の歴史(明治期以降の先進的な外国の技術の導入とそれに伴う国内の様々な技術の発展等)、(2)海洋環境や資源状況の情報とその活用状況(人工衛星等の活用による海洋環境や資源状況の把握と予測)、(3)ICTの活用(養殖業、沿岸漁業、沖合域の漁業、流通・加工等の各分野における取組事例)について取りまとめ、分析しています。
 その上で、科学と現場が一体となる水産業の持続的な発展に向けて、漁業の特殊性を考慮したICTの活用が重要であること、また、ICTの活用による水産業に関わる幅広いデータの取得・共有・活用の促進により生産性の向上や効率的・先進的な水産業(スマート水産業)への転換が可能となることなどについて記述しています。

(第2章)平成28年度以降の我が国水産の動向

(1)水産資源及び漁場環境をめぐる動き、(2)我が国の水産業をめぐる動き、(3)水産業をめぐる国際情勢、(4)我が国の水産物の需給・消費をめぐる動き、(5)安全で活力ある漁村づくり、(6)東日本大震災からの復興について主な動向を記述しています。

平成30年度水産施策
平成29年4月に閣議決定された新たな「水産基本計画」を踏まえて、平成30年度に講ずる施策について記述しています。』

と平成29年度の水産業の動向、平成30年度の水産業の施策の2部構成で、
1部には、特集として、ICTの活用による生産性向上への取り組みと期待を採り上げています。

特に『漁業の特殊性を考慮したICTの活用が重要であること、また、ICTの活用による水産業に関わる幅広いデータの取得・共有・活用の促進により生産性の向上や効率的・先進的な水産業(スマート水産業)への転換が可能となること』

と、今後の水産業におけるICT(さらには、AI・IoT)の活用において、データの取得・【共有】・活用の促進により生産性の向上やスマート水産業への転換が可能になると、データの共有・一元化の重要性を述べている所が重要な視点だと感じます。

 

2. 酪農家の生産性、AIで向上 信州大が手法開発へ

第一次産業の他の分野では、2018/5/25の日経が、
表記の題で、信州大学のAIによる酪農家の生産性向上への取り組みを報じています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30988220V20C18A5L31000/

『信州大学は酪農家の生産性向上を目指し、センサーやAI(人工知能)を活用した飼育管理手法の開発に乗り出す。センサー技術でウシの行動を分析し、AIで疾病や発情期を予測する。全国の研究機関と連携し、ウシのストレスを減らして生産性を上げる飼育環境や飼料の開発を目指す。』

牛のストレスに着目した飼育環境や飼料の開発を通じて生産性向上を目指すとのこと。

研究リーダーの竹田謙一准教授は、2018/4/27の信州大のリリースでも、
信州大学(農学部)が東京工業大学COIプログラムにサテライトとして参画
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/news/2018/04/coi.php

『東工大COIでは、地球上の人類の枠を超えた様々な声なき声(サイレントボイス)に耳を傾け共感する(インクルーシブセンシング) ことにより、人・社会・環境の問題に対して、人を通じて低環境負荷な人と地球に優しい方法で解決していくサイクルの実現を目指します。信州大学では、”動物のサイレントボイスとの共感”を担当し、主に牛の行動をマルチモーダルセンシングし、データのAI処理により牛の発情や健康状態(サイレントボイス)を把握し、飼育管理者に対して対応が必要な情報を提供するとともに、飼育の状況を消費者も共感できる、新たな家畜生産体系を目指します。』

東工大とのコラボレーションに参加して、“動物のサイレントボイスとの共感”(牛の行動データのAI処理によるサイレントボイスの把握)を担当しており、今回の取り組みもその流れから生じたものと思われます。

 

3. AI・IoT活用研究におけるコラボレーションとデータ共有

AI・IoT自身の研究・開発と、その適用先ごとの特性に応じた活用研究・開発の双方が必要であり、そこでは複数の研究機関や民間企業、さらにスマートシティのような分野では行政も含めて多くのプレーヤーが参加するコラボレーションが必須となってきていることが、最近の多くの記事からうかがえます。

そこでは、データの共有も必要であり、データフォーマット等の標準化、データ管理の一元化などを行い、プラットフォームを形成することが必要であることを改めて感じた次第です。

 

4.自社の関係資産構築において、データや知見の共有化を見直す

大手企業以上に中小企業では、新規事業や、生産性向上などに取り組む上でコレボレーションは必要となってきていると思います。

そして、知的資産経営の関係資産である関係者(取引先、顧客)と互いの知見やデータを共有する仕組みづくりを進めることは、コラボレーションを円滑に進めることに加えて、その中で自社が重要なポジションを占めるという意味でも取り組む価値があるものと考える次第です。

なお、第一次産業へのAI・IoT適用については、
日本卸売市場のAIによる漁獲予測の成果の鍵を握るものは?
https://wp.me/p9D2bS-cn

「オプティムとみちのく銀行の提携にみるあらたな「集中と分散」」
https://wp.me/p9D2bS-sj

でも採り上げていますので、こちらもご覧いただければ、大変幸いに存じます。

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