バナナの絶滅危機に考える「選択肢の確保の競争」への対応

【今日のポイント】
バナナが真菌性疾患(カビ)で絶滅の危機に瀕しているという記事。
単一農業のリスク「多様性」の重要性を端的に表している事例ですが、「多様性」を「選択肢の確保」と置き換えると、その戦略や今後の競争激化の予想などに結びつけやすくなると考える次第です。
2019/11/26の1日5分ビジネス英語に表記のトピックスが掲載されていました。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『コロンビアでは、熱帯種4(TR4)と呼ばれる真菌性疾患が農場で確認された後、緊急事態を宣言した。TR4は、すでに東南アジア、パキスタン、ヨルダン、モザンビーク、およびオーストラリアのバナナ作物に損害を与えている。それは果物の将来についての懸念を引き起こしている。
(中略)
TR4は、輸出市場全体の99%を占めるキャベンディッシュバナナを栽培している農園に感染するため、バナナ産業にとって特に懸念事項である。感染した土壌で育ったバナナは人間にとって危険ではないが、植物は最終的に実をつけなくなる。』
このバナナ危機については、以下の記事などでも紹介されており、かなり深刻な問題と感じました。
『いま、バナナが絶滅の危機にひんしている』
2019.08.29WOREDの記事。
●選択肢の確保の競争
単一の農作物を生産する農業(モノカルチャー)の、商業面でのリスク(需要と供給のアンバランスへの対応)や、病虫害リスクについては、他の農作物でも度々目にするところですが、
今回の記事や上記のモノカルチャーに関する記事などからは、「選択肢確保の競争が人間間でも生物種間でも進んでいる」と感じます。
記事中のバナナの品種キャバンディッシュは、輸出されているすべてのバナナの99パーセントを占めており、かつそのほとんどはラテンアメリカで栽培されているとのこと。
単一品種という点でも、栽培地域の集中という点でもリスクマネジメントの面からは、冗長性などの危機管理が弱いことが窺われます。
自分の選択肢を確保しておくこと、逆に相手の選択肢を狭めることは契約など種々の交渉戦術で説かれているところですが、今回のバナナなどは自分から選択肢を狭めることで、病虫害等への対応力を低減させていることを改めて感じます。
契約交渉の場合は、個別条件の選択肢だけでなく、交渉そのものをやめられる選択肢(「BATNA=Best Alternative To a Negotiated Agreement (交渉が決裂した時の最善の対処策、案不調時対策案) 」)も非常に重要となります。
この契約時の選択肢の確保については、以下のトピックスをぜひご参照ください。
『委託契約のポイント(入門編)-その(2)契約交渉前の準備』
●「多様性」を「集中と分散」や「選択肢の広さ」に置き換える
今回の「バナナ」のように、環境や人材の分野では「多様性」という言葉をよく目にします。
この「多様性」という価値観はもちろん大変重要ですが、戦略的な対応に結びつけにくい可能性を感じる場面に出会うことがあります。
このような場合に、「多様性」「選択肢の広さ」をという戦略的な言葉に置き換えることは、対策に結びつけやすくなるとともに、単に「多様性が重要」というだけでなく、そこから実際に多様性を確保・拡大するための対応策を考える意識つけになるものと思います。
●個人でできる多様性の確保例「場所を変える」
これは、契約交渉ではありませんが、個人でできる多様性の確保の一つに「場所を変える」というものがあります。
以下の記事のように、脳の「場所ニューロン」の活性化に繋がるという点からも、心がけたいと改めて感じた次第です。
『「デスクでお昼を食べる人」の仕事が遅いワケ』東洋経済ONLINE
(2014年度の)『本年度のノーベル生理学・医学賞の解説』日本神経科学学会
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