公正取引委員会のフリーランスに関する検討にみる、人材確保の視点

● 公正取引委員会がフリーランスの契約実態調査を開始

平成29年7月12日に公正取引委員会の競争政策研究センターは,人材と競争政策に関する検討を行うため、関係の有識者からなる「人材と競争政策に関する検討会」を設置し8月4日に第1回検討会を開催しました。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/jul/170712.html

本検討会の設置の背景については以下のように記載されています。
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)
「終身雇用の変化やインターネット上で企業と人材のマッチングが容易になったことなどを背景として,フリーランスや副業など就労形態が多様化し,雇用契約以外の契約形態が増加している。技能人材など一部職種については,需給が逼迫しているとの指摘がある。

例えば,2016年度に行われた調査によれば,IT企業の20.3%がIT人材が大幅に不足していると認識しており,同66.6%がIT人材がやや不足していると認識している(「IT人材白書2017」独立行政法人情報処理推進機構)。

就労形態を問わず,国民が自由に就労し,働きがいを得るとともに,その労働の価値を適切に踏まえた正当な報酬を受け,また,他方で,使用者が有為な人材を適切に獲得することができるためには,使用者による人材獲得競争が適切に行われることが重要となる可能性がある。」

人材獲得競争の適正化がフリーランスで働く人材が正当な報酬を得ることにもつながるという、公正取引委員会らしい競争促進の視点ですね。

 

8月4日の検討会について、
議事要旨では、
「 ○ 労働サービスが市場での取引とみなされるか否かは,労働者が事業者性を有するか否かが判断基準になる。この際,事業者性は労働者個人単位ではなく,その働く局面に応じて判断されるべきではないか。プロスポーツ選手,俳優,タレント等の行為については,場面又は行為によって独占禁止法,労働法のいずれの適用もあり得るのではないか。
○ 近年の最高裁判決により労働者の範囲が拡大されたことも踏まえ,事業者的な労働者の団体が締結した労働協約は独占禁止法上どのように評価されるのか。
○ 被用者・受注者側でなく,使用者・発注者側のカルテルといった共同行為がより論点として注目されるべきではないか。
○ フリーランス等について起こっている今日的な問題について,独占禁止法の観点から先手を打った議論が必要ではないか。
○ 全体的な傾向として,個人と企業の間に情報の非対称性や交渉力の差が存在することから,それらを踏まえた上で行為を評価する必要があるのではないか」

など、フリーランスで働く人々の「労働者」という側面(労働法で保護)と、「事業者」(下請法等で保護)という側面の双方から、保護や支援が必要との認識を示しています。

また、この中で「使用者・発注者側のカルテルといった共同行為」というのは、大変興味深い視点だと感じました。

ランサーズなどのフリーランスのマッチングサイトなどは、例えは悪いかもしれませんが、価格.COMのように人材の低価格化競争を促進する方に機能する可能性もあり、これらのネットを利用した発注行為が意識するしないに関わらず、カルテル的な共同行為となる可能性もあるのではと感じた次第です。

● ネットによる新しい働き方

AIの利用を背景に、ヒューマンクラウドと呼ばれるような、ネット上での人材のストックマーケット、アマゾンが運営するメカニカルタークが提供するマッチングビジネスを利用した「マイクロワーク」と呼ばれるプロジェクトへの一部分への参加など、働き方の選択肢は増えているようです。

グーグルでは、10,000人以上のレイターと呼ばれる「評価者」を雇ってユーチューブ動画や新しく始まったサービスを確認、評価を行っているそうですが、単純労働が機械に置き換わるだけでなく、AIと人間の感性を組み合わせた手法は今後も増えて行きそうですね。

● 人材確保も幅広い情報収集が必要
上記のように、人材を確保する側にとっても選択肢は増えていく方向にあることは間違いないところです。

一方で、公正取引委員会の検討会のように、
人材獲得競争の適正化と、労働者の保護の観点からの議論も始まっており、今後新たな規制が生まれる可能性も高いと考えられます。

世の中の動向を踏まえて、自社の人的資産や関係資産の捉え方を今までより柔軟に広げていくとともに、コンプライアンスも含めたリスク面、今後の政策を含めた動向への注視が必要と考える次第です。

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