世界の電子統治に関する国連調査に考える、市民参加型のスマート行政とその中でのビジネスチャンス
【今日のポイント】
2020年の世界電子政府ランキングで日本は前回の10位から14位に後退し、デジタル化の促進が課題と指摘されています。
今後は、市民参加型のスマートシティ構築や行政のデジタル化が民間の支援も受けつつ推進されていく中で、企業のビジネスチャンスも広がってくるものと、今まで以上に自社の知的資産を地域社会などに転用する機会へのアンテナを張る必要性を感じる次第です。
【目次】
1.国連の各国電子政府に関する調査
2.行政のデジタル化(スマート化)とネット等による市民活動の参加の連動の重要性
3.スマート行政と市民活動の連携に自社のビジネスチャンスを探る
1.国連の各国電子政府に関する調査
国連は、「世界電子政府ランキング2020」を2020年7月に発表しました。
https://publicadministration.un.org/egovkb
その概要は、2020/10/15のdmenuニュースなど、いくつかのメディアでも報じられています。
同ランキングでは、デンマークがトップであり、第2位は韓国、第3位はエストニアとなっています。
日本は電子政府先進国にランクインしてはいますが、2018年の前回調査の10位から14位へと順位は後退しています。
このランキングについては2020/7/15のCOINPOSTでも報じられています。
『「世界電子政府ランキング2020」日本はTOP10転落、エストニアが大躍進』
上記のいずれの記事でも、新型コロナが政府のデジタル化を促している事が指摘されており、ここにも新型コロナで従来から起きつつあった変化が加速されている様子が窺えるかと思います。
なお、この各国の電子政府への取り組みについては、早稲田大学でも毎年ランキングを公表しています。
『電子政府・自治体研究所:第15回早稲田大学世界デジタル政府ランキング年次調査発表』
2020/9/9早稲田大学 総合研究機構のリリース。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『「世界デジタル政府ランキング」は,世界のICT先進国64カ国におけるデジタル政府の総合的成果かつ歴史的推移などを解説しています.毎年報道発表される本ランキングは,3指標のみ隔年発表の国連と並ぶ世界2大評価として世界中から注目されています.
15回目を迎えた今回の年次調査では,1位:米国,2位:デンマーク,3位:シンガポールの順になりました.日本はオーストラリアに次いで7位に登場しています.各項目や地域ごとのランキングと解説を記載するだけでなく,過去15年にみる世界のデジタル政府の進展,総合ランキングの推移,セクター指標別ランキング,地域別ランキング,注目の新潮流5大テーマなどをまとめています.』
日本の課題として、官庁の縦割り行政,電子政府(中央)と電子自治体(地方)の分離,それに市町村の財政・デジタル格差,国民に直結する出先のICT人材不足などの構造的弱点を挙げています。
2.行政のデジタル化(スマート化)とネット等による市民活動の参加の連動の重要性
今回の記事と、2019/4/6の1日5分ビジネス英語の
『トラッシュタグチャレンジ、新しいソーシャルメディアのトレンド』
や以下の2019/3/17のCALQUEで採り上げられていた「#TrashTag 」とのハッシュタグを付けて情報発信するゴミ拾い運動、
『世界中で大流行中!ゴミ拾い促進運動「#TrashTag チャレンジ」とは?』
そして、
『セールスフォース、租税政策の立案にAIを活用する手段を研究—「AI Economist」発表 』
2020/4/30ZDNNetJapan
などの行政のデジタル化と、ネットを活用した市民活動からは、「市民参加型のスマート行政へのニーズ、プライバシー保護への信頼性の面からも更に高まる」事が予想されるかと思います。
Googleの兄弟会社Sidewalk Labsが進めていたカナダ州トロントのスマートシティプロジェクトは、その後住民のプライバシー侵害の懸念や新型コロナの影響などから中止となったことが以下の記事などにも掲載されていますが、
市民の意見を吸い上げるとともに、行政活動にSNSなどのネットも活用し得て市民も参加できるような仕組みが重要かつ実現性を増していると感じます。
『グーグルの兄弟会社Sidewalk Labs、トロントのスマートシティ計画を断念』
2020/5/8CNET Japanの記事。
『グーグルの姉妹会社はなぜ撤退したか トロントで挫折したスマート・シティ』
2020/9/25The Asahi Shimbun GLOBE+の記事。
これらの課題は、新型コロナのワクチン接種や外出抑制など市民と行政の協力が今まで以上に求められている分野では特に顕著になっていると感じます。
(なお、上記のSaleforceのAIエコノミストについては、2021/5/6に世界を変えるアイデアコンペティションで認められたとのプレスリリースを公表しています
『Salesforce’s The AI Economist Recognized in World Changing Ideas Competition』)
以前にも本ブログの中でご紹介しましたが、
スマホを利用した、道路などの社会インフラ監視への市民参加が千葉市などで始まっています。
また、企業もAI/IoTなどの新技術を使って公共インフラのメンテナンス効率化を進めていますが、これらのデータも今回のようなスマート行政と連動して効果を発揮するものかと思います。
『道路パトロール支援サービス』
富士通の自治体向け、道路施設の予防保全のサービスの紹介(富士通HPより)。
以下の記事に見るように、新型コロナウィルスによる巣ごもり需要への対応の視点からは、LINEやフェイスブックなどが地域版での情報提供に適したサービスを提供し、オンラインでのタウン情報誌や電子回覧板が活性化すれば、情報発信だけでなく、市民のニーズをきめ細かく汲み取って、政策に反映することも容易になってくるのではないかと期待を込めて予想した次第です。
『LINEの中小企業向け事業の現在 最新サービスと事例を知る』
2019/9/17のITmedhiaマーケティングの記事。
3.スマート行政と市民活動の連携に自社のビジネスチャンスを探る
上記のちばレポや富士通、LINEなどの取り組み、また以下のトピックスで取り上げた、横浜市のICT活用による市民参加型実証や金沢市など、行政と市民をネット等で繋ぐ動きは、新型コロナ下で更に進むことが予想できます。
『横浜市のICT活用による市民参加型実証にみる社会課題対策の選択肢とビジネスチャンスの広がり』
『金沢市の電子回覧板の防災への利用にみる、日常と非日常をつなぐ仕組みの重要性』
その中で、自社はどのような価値を提供できるか、まずは行政と市民の双方にどのような情報を発信し、ニーズを把握するかというコミュニケーションの面から検討を着手しつつ、そこに自社の既存の知的資産の転用や新規の市場を探ることも、今後の事業展開を考える一つの方法と考える次第です。
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