技術契約に必要な知的資産と得られる知的資産とは(共同研究開発契約を例に)(1/2)

【今日のポイント】

技術契約の対象となる研究開発や知的財産は企業の知的資産に関するものであり、技術契約自身も知的資産経営の一部と言えるかと思います。

その技術契約に必要な知的資産と得られる知的資産について、共同研究開発契約を例にとって、2回に渡って考えてみたいと思います。

今回第1回目は、契約交渉の事前準備から契約書の各項目、ひな形の段階を取り上げて行きます。

 

【目次】

1.研究開発(契約)と知的資産の関係
2.共同研究開発契約交渉前の準備
3.共同研究開発契約書の構成とひな形

1.研究開発(契約)と知的資産の関係

今回のトピックスでは、研究開発と知的資産の関係を、技術契約の面から見た際に、
技術契約業務の各場面で、主にどのような知的資産が必要となり、また契約締結までの業務とその後の研究開発中の契約業務を通じて得られる知的資産にどのようなものがあり得るかということについて、その概要を2回に分けてお伝えいたします。

第1回目の本トピックスでは、事業と技術の関係から技術と知的資産、その技術を得るための研究開発と関連する契約と知的資産の関係についてごく簡単に触れた後、

共同研究開発の実務フローを例に、契約交渉前の準備から、共同研究開発契約書の構成と規定すべき事項、ひな形の効用と注意点などを通じて各業務毎に必要とされる知的資産と、業務を通じて得ることが期待できる知的資産の例を、人的資産、構造資産、関係資産別に挙げてまいります。

 

なお、知的資産や知的資産経営については、本ブログのトップページに掲載している
『知的資産経営とは(概要説明)』
もご参照いただければ、大変幸いに存じます。

 

 

1-1.事業と技術(研究開発の目的)

(1)事業では商品開発、業務の実施などそれぞれの分野において何らかの「技術」が必要となってきます。

2)技術の調達(入手方法)は大きくは買ってくるか、自分で研究開発するかの2つに分かれます。
買う方法としてはライセンスや委託開発など、自分での開発では単独開発と共同開発などが考えられます。

>モノに体化された技術をモノごと買ってくる(例>PC購入など)は今回の対象外としております。

 

1-2.技術と知的資産

(1)技術自体や、その技術を権利化した知的財産権(特許権、意匠権、プログラムなどの著作権など)は知的資産の一部です。

(2)技術(知的資産)の調達方法に関する仕組みや知見も重要な知的資産になり得ます。
例>技術開発の人材(人的資産)技術開発で得た知的財産(構造資産)社外(大学などの研究機関)との関係(関係資産)

 

 

1-3.技術契約と知的資産の関係

(1)外部からの技術の導入時共同での技術開発やその成果の取り扱い時には、多くの場合に何らかの契約を結ぶ事が必要となります。

(2)この契約業務の仕組み(業務フロー)契約に関するデータベース等(に蓄積される知見、データ)や担当者も知的資産となり得るものとなります。

次章からは、共同研究開発契約の実務フローを例に取って、各段階で必要な知的資産、得られる知的資産の例を考えてみたいと思います。

 

 

2.共同研究開発契約交渉前の準備

2-1.研究開発と関連契約の目的設定

ビジネスの目的から逆算して今回の共同研究開発の目的、得たい成果などを明確にし、社内で共有することが、共同研究開発契約業務の第1歩となります。

共同研究開発契約単体でなく、その前後の事業と研究開発の流れの中での位置づけを知っておくことは非常に重要です)。

>この段階で主に必要な知的資産としては、

・適切な契約を選ぶ知見(人的資産)
・研究開発と契約業務のフロー図・ルールなど(構造資産)
・中小企業診断士や弁護士などの外部専門家(関係資産)
・共同研究開発とその契約の要否判断能力(主に人的資産、外部の専門家(関係資産)、
・研究開発の目的設定の仕組み(構造資産)

などが挙げられるかと思います。

>得られる知的資産としては、

・顧客(企業)の中での共同研究開発の目的と事業目的の関係認識およびその共有(人的資産から構造資産へ)

などが挙げられるかと思います。

 

 

2-2.各種制約条件の明確化と共有

契約内容を検討する際には、法規制や予算、期間などの制約条件も考慮して、譲れる部分と譲れない部分を明確にする事が必要となります。

費用対効果

>ここで主に必要な知的資産としては、

・上記の調整などの業務フローのマニュアル化等による標準化の仕組み(構造資産)、
・ファシリテーターなど調整の技術(人的資産)、
・関連法規に関する情報収集の仕組み(構造資産)、
・関連法規の影響の判断(人的資産)やその判断に関する外部専門家の支援(関係資産)など

などが挙げられるかと思います。

 

 

2-3.交渉戦略の立案

契約の内容や条件の自社の案がほぼ出来た時点で、相手のニーズ・懸念点などを推測して、相手の手札を予想し、契約交渉の戦略を立てる段階に入ります。

交渉がまとまらないときの最善の対処策(BATNA)も用意しておく事が、交渉を有利に進める上でも望ましい事も意識して準備を進めることが必要となります。

>ここで主に必要な知的資産としては、

・交渉(とその準備)に関するスキル(人的資産)、
・相手のニーズを知るための情報収集の経路(関係資産など)など

などが挙げられるかと思います。

 

>得られる主な知的資産としては、

・交渉スキル(人的資産)、
・自社の強み・弱みの認識と共有(構造資産)、
・他の契約先候補などの選択肢(関係資産など

などが挙げられるかと思います。

 

 

3.共同研究開発契約書の構成とひな形

3-1.共同研究開発契約書の構成例

共同研究開発契約書に限りませんが、一般的に表題、前文、本文、末文という構成例が考えられます。

 

>ここで主に必要な知的資産としては、

・過去の契約事例の知識や経験(人的資産⇒データベース(以下「DB」)化して構造資産に)
・ひな形(構造資産)

などが挙げられるかと思います。

 

 

3-2.契約本文への記載事項

本文には、各種定義、共同研究開発の範囲、具体的な共同研究開発項目と業務分担、共同研究開発期間、費用、得るべき成果(成果の帰属と実施方法など)、秘密保持義務、一般条項などを記載します。

タイムスパン スケジュール

 

 

 

 

 

 

>ここで主に必要な知的資産としては、

・契約内容の規定と交渉全般のスキル(人的資産)に加えて
・自社の研究開発内容の具体化と明確化およびその共有(構造資産)、
・経理など社内関連部署との連携の仕組み(構造資産でしょうか。)、
・気軽に相談できる環境=普段からの付き合い(人的資産や社内風土などの構造資産)

などが挙げられるかと思います。

 

>ここで得られる主な知的資産としては、

・業務分担の明確化を通じて得られる契約相手の状況と自社の状況の相互理解(関係資産)
・進捗管理や費用の規定とその交渉を通じて得られる研究開発の進め方、リスク回避等に関する知見の共有(人的資産から構造資産へ)、
・議事録などによる研究開発の実施の記録(構造資産)
・法務リスクに関する知見(人的資産、外部専門家との関係資産)
・契約締結日や有効期限などと締結作業に関する契約実務の経験や社内調整能力(人的資産)、
・契約業務プロセスと所要期間を反映した研究計画書等とその作成マニュアル(構造資産)

などが挙げられるかと思います。

 

 

3-3.ひな形のメリットと使用上の注意点

ひな型には、項目の抜け漏れを防ぐチェックリストとしての機能や、効率的に契約案作成を進められるというメリットがあります。

一方で、個別の案件ごとに条件や取り決めるべき項目が変わることを想定した見直しが必要となります。

また、法規制などの外部要因の変化にも注意が必要です。

チェックリスト

>ここで主に必要な知的資産としては、

・ひな形の内容とその改定の要否を判断できるスキル(人的資産)、
・ひな形とその改定(更新)記録(構造資産)、
・関連法規制のモニタリングの仕組み(構造資産)、
・専門家のフォロー(関係資産)、

などが挙げられるかと思います。

 

 

>得られる主な知的資産としては、

・ひな形とその改定経緯の記録による知見の蓄積(構造資産)、
・ひな形とその利用を通して契約について得られる知見(人的資産)

などが挙げられるかと思います。

 

 

次回第2回『技術契約に必要な知的資産と得られる知的資産とは(共同研究開発を例に)(2/2)では、以下の項目についてお話しいたします。

4.共同研究開発契約書の作成・修正時のポイント
5.契約交渉から締結後の管理のポイント
6.まとめ:共同研究開発(契約)に必要な知的資産、得られる知的資産
7.技術契約と知的資産経営(および参考トピックス)

 

 

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