気球によるケニアの通信網構築にみる、新しいインフラビジネスの発信地としてのアフリカ

【今日のポイント】
気球による通信インフラ
整備、AI・ドローンによる食糧問題、電化推進によるエネルギー問題など、アフリカでは、社会インフラの課題に、各国の政府や巨大IT企業、スタートアップなどが市場参入を試みています。
既存のインフラが不足しているが故に、新しいインフラ形態やビジネスモデルが生まれているアフリカの動向は、新規市場としても、日本含めて海外への波及の面からも要注目と考える次第です。
● 農業支援もサブスク、南アフリカ発「Aerobotics」 はAIとドローンで食料問題に挑む
2020/7/28のBRIDGEに表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『ニュースサマリ:南アフリカでのケープタウンを拠点とするAgritechスタートアップAeroboticsは今年5月、Naspersの設立した投資ファンドNaspers Foundryから1億ランド(550万米ドル)の資金を調達した。
Aeroboticsの創業は2014年。
ドローンで撮影した高解像度の農作物の画像と衛星画像とを、AIを使用して解析し、農家のコスト削減や生産性向上を支援するサブスクリプションサービスを提供している。
同社は2019年からはアメリカでの事業拡大にも重点を置き、前年比4倍の収益を上げるなど順調な成長を遂げている』
⇒「アフリカ×新技術×ビジネスモデル」の視点で、各産業でのビジネスモデル展開や進化を観る有用性を感じる次第です。
なお、20202020/07/21の1日5分ビジネス英語では、アフリカのインターネットインフラについて、以下のトピックスを掲載しています。
『グーグルのプロジェクトルーンは、ケニアの孤立した地域で、通信プロバイダーのテルコムと提携してインターネットを利用した気球を開始した。これは、ルーンプロジェクトの最初の実社会での利用になる。』
⇒これも、新しい通信インフラ構築のさきがけとして、今後の動向に要注目かと思います。
●社会インフラとしての通信や電力の分散化や新しいビジネスモデル発信地としてのアフリカ
上記の記事などからは、
「社会インフラとしての通信や電力の分散化と新しいビジネスモデルがアフリカから始まる」動きが進んでいる事を感じます。
エネルギー(電力)分野について、アフリカの電力事情と海外の支援策は、以下の記事にもみるように、公的機関の支援はどちらかというと従来型の系統電力による集中型が中心のように感じられます。
『JICAによるアフリカ電力開発支援』
2017年6月の独立行政法人国際協力機構(JICA)産業開発・公共政策部の資料。
『アフリカのエネルギー普及のための新政策「ニューディール」2025年までにアフリカに明かりと電力を供給する変革的パートナーシップ』
2016/3/30のアフリカ開発銀行の記事。
一方で、民間では、AI・IoTも活用した分散型での電力供給ビジネスも始めています。
『アフリカの電力不足、日本勢に商機 中国や欧州勢へ巻き返しを図る (1/2ページ)』
2019/8/20のSankeiBizの記事。
『大きな発電所や電線が無くても、アフリカの6億人に電力は提供できる。 ― WASSHA株式会社 秋田智司』
2017/11/6のastavisionの記事。
『東京大学で生まれた送配電技術「デジタルグリッド」を元に創業されたWASSHA株式会社が事業を伸ばすメイン市場は、日本から遠く離れたアフリカ・タンザニア連合共和国。』
WASSHA株式会社は現在、空調機器メーカのダイキン工業株式会社と共同で、エアコンのサブスクを事業とする合弁会社も設立しています。
『空調未成熟市場でエアコンのサブスクを事業とする合弁会社を設立』
2020/6/16の同社のプレスリリース。
『ダイキン工業が持つ、耐久性に優れ、高効率で環境負荷が低いエアコンとサービス網の構築力、WASSHAが持つ、モバイルマネーを経由した料金回収技術と東アフリカでビジネスを展開するノウハウを活用し、ユーザーが日・週・月ごとに使用料をスマートフォンで支払うことで、エアコンを使用したいときだけ使用できるサブスクリプションを事業化します。』
広大かつ既存のインフラが不十分なアフリカでは、以前中国で固定電話よりも携帯電話が普及したように、電力、そして通信インフラにおいても、分散型かつシェアリングなど新しいビジネスモデルが受け入れられやすい土壌があり、既にモバイルマネーの普及などにもその傾向が現れているようですので、
以下の記事にも見る様に、今後社会インフラの新しいビジネスモデルがアフリカ発で世界に広がる可能性も感じた次第です。
『アフリカビジネス5つの注目トレンド』
2019/7/31のJETROレポート。
『5つの注目トレンド
1ビジネス環境に改善の動き
日本企業も関心の高いアフリカのビジネス環境をめぐる動きを紹介する。フリーゾーンや工業団地の整備を進めるほか、二国間の協力強化など外資誘致に取り組む3カ国を取り上げる。2地域統合(AfCFTA)の進展に期待
アフリカ連合(AU)加盟55カ国・地域から成るアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定が発効、市場統合への期待が高まっている。現地7カ国からその反響を伝える。3現地スタートアップが市場との懸け橋に
アフリカのスタートアップの資金調達額が著しく伸びている。主要5カ国の有望企業やエコシステムの現状に迫り、連携による新たな市場アプローチの可能性を模索する。4第三国企業との連携で新たなチャンス
アフリカ市場に参入する手法の1つとして、第三国企業との連携が注目されている。連携の候補となる企業の顔ぶれや連携のメリットについて、世界9カ国からの報告を紹介する。5アフリカビジネスに挑む中小企業
ビジネス障壁が多いと言われるアフリカだが、現地でのビジネスに果敢に挑む中小企 業がある。北海道から広島まで全国8社にインタビューし成功のカギを探る。』
『アフリカビジネス新戦略』
2019年7月のMETIジャーナル。
スタートアップ支援やデジタル化など7つのアフリカ向けビジネス戦略に関する記事を掲載しています。
●「レガシーがない」ことの有利さを、チャンスとリスクの両面から考える
既存のインフラや設備がなければ、それに囚われず、最新の設備・技術をいきなり取り入れることも可能になってきます。
アフリカに限らず、既存の企業の持つインフラ等の資産とは別の土俵で勝負するということは、『イノベーションのジレンマ』などでも取り上げられているテーマですが、
新規市場の機会であると同時に、既存のインフラでビジネスを展開している企業にとってのリスクともなりえますので、自社は使わない技術やサービス、インフラに関しても顧客ニーズや顧客への提供価値という視点から、競合となり得るものかという検討が必要になってきます。
そのような視点で、自社の経営資源を知的資産も含めて見直すうえで、今回のアフリカの事例も参考になるものと考える次第です。
なお、アフリカは、以下の記事に見る様に、 5Gの分野などで欧米や日本と異なる方向に進む可能性も持っていますので、その点からも、ウォッチングが必要かと感じます。
2020/8/14日本経済新聞。
ドイツなども含めて、中国への対応は各国様々ですが、今後の成長やイノベーションのポテンシャルの高いアフリカの動向はやはり気になる所です。
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